これがリアルファンタジー!?
2018年のスウェーデン映画
出演者はエヴァ・メランデル、エーロ・ミロノフ
他の人とちょっと違う、ボーダー上の存在を描くファンタジー
こんな人にオススメ!
・暗い作風が好き
・好みの別れる映画が好き
・実は深いテーマの作品が見たい
プライムビデオ「ボーダー 2つの世界」が5分でわかる!
あらすじ
・変わった女
税関で働くティーナは、生まれつきの醜い容姿に悩まされながら生きていた。
ティーナは感情の揺らぎを匂いで感じ取れる能力を持っており、男がは不審なチップを隠し持っていることを嗅ぎ分ける。
チップを調べると中身は児童ポルノで、男は単純所持の罪で逮捕される。
翌日、ティーナにそっくりな醜い男が税関を通る。
ティーナはこの男に何かあることを嗅ぎ分けるが、ヴォーレと名乗ったこの男をよく調べても臀部に傷があること以外何も出なかった。
実はティーナにも臀部に傷があり、それは3歳の時尖ったものを踏んでできたものだと父に言われていた。
その帰り、ティーナが車を運転していると隣人が目の前に飛び出てくる。
隣人は陣痛が始まった妻を乗せてほしいと言い、ティーナは無事に夫妻を病院に届ける。
ティーナはヴォーレが虫の幼虫を集めているのに出くわし、ヴォーレとその幼虫を食べる。
ティーナはローランドという男と暮らしていたが、宿がなかったヴォーレを自分の家に泊めることにする。
児童ポルノの件で逮捕された男の背後関係を洗うため、容疑者のアジトを探ったティーナは、赤ん坊のいる部屋が怪しいと感じとる。
勝手に部屋を覗こうとしたため部屋の住人から激怒されるが、その部屋から出生届は出ていなかった。
部屋で何かが起こっていると感じたティーナは、警察に部屋に踏み込むべきと進言する。
深夜、ティーナがこの部屋を捜索すると、トロフィーの中に児童ポルノの画像が隠されているのを見つける。
児童ポルノがこの部屋で撮影されたものと見て、この部屋の夫妻を取り調べるが、夫妻は容疑を否認する。
ティーナの真実
そんな折り、ローランドがドッグショーで家を数日空けることになる。
ティーナとヴォーレは以前出産を助けた隣人の家を訪ねるが、ティーナが抱いても子供は泣き止まず、子供は2人に全く懐かなかった。
その日は雷雨になり、雷に怯えたティーナとヴォーレはふたりでテーブルの下に潜る。
そして2人は関係を持つようになり、ヴォーレはティーナに同じトロルの仲間であると語る。
トロルの特徴は感情を嗅ぎ分けられることと尾っぽあることで、2人とも尾っぽは幼いときに切り取られていた。
ティーナは自身に染色体異常があると思い込んでいたが、トロルの染色体が人間と異なっていることを知る。
ヴォーレはフィンランドにあるトロルの仲間に会いたいが、連絡を取る術がないという。
ヴォーレの両親は、彼が幼い頃に実験材料として拷問されており、ヴォーレは養護施設を転々として成長していた。
ティーナが児童ポルノの摘発に協力したことを話すと、人間は自分のために何でも利用する寄生生物だとヴォーレは吐き捨てる。
自分の父はそうではないとティーナは話すが、父はティーナの本当の両親は死んだことを明かす。
ボーダーを超えて
家に帰ったティーナは、自宅からローランドを無理やり追い出す。
ヴォーレと暮らすようにになったティーナだったが、ヴォーレが小屋の冷蔵庫に何かを隠しているのを感じとる。
ヴォーレが不在の間に、小屋の冷蔵庫を見たティーナは、赤子が箱に入れられ生きているのを見つける。
ティーナは児童ポルノを撮影していた夫妻の妻の取り調べに立ち会い、妻は夫が知人から赤子をもらっていたと話す。
実はヴォーレは男と共犯で、ヴォーレは口封じのためこの夫を護送中に殺害する。
ティーナがヴォーレを問い詰めると、小屋に隠していた赤子はヒイシットという彼の未受精卵であるという。
ヒイシットは外見こそ人間の赤子だが、食べて眠るだけで長生きしない存在だと話す。
ヴォーレは人類に復讐するため、人間の赤子とヒイシット入れ替え、さらった人間の子供を児童ポルノに売っていた。
ティーナが出産を手伝った隣人に行くと、突然子供の様子がおかしくなったと言い救急車が呼ばれていた。
しかしその家でティーナが見たのは、彼らの赤子ではなくヒイシットだった。
分かれ道
ヴォーレはティーナをフェリーに呼び出し、種の存続を持ちかけるがティーナは誰も傷つけたくないと断る。
ティーナの背後から現れた警察に逮捕されそうになったヴォーレは海に逃げ込み、浮かんでこなかった。
その後ティーナは父と会い、父は娘が欲しかったので本当の両親からティーナを預かったという。
ティーナの本名はレーヴァといい、死亡したティナの両親は病院棟に埋められていた。
山に帰ったティーナだったが、ある時自分の家に子供が入った小箱が届く。
小箱はフィンランドから届いており、子供は毛深く尻尾があったのでトロルであることは明らかだった。
子供に虫の幼虫を食べさせたティーナは子供が笑うのを見て嬉しそうに笑うのだった。
レビュー・考察
北欧発、トロルを描いたドラマ。
トロルというとドラクエの異形の怪物やアナ雪の森に住む魔法使いをイメージするかも知れないが、本作のトロルは人間そっくり。
人間の娘として育てられたティーナは、醜い容姿に悩みながらも、感情を嗅ぎ分ける能力で人間社会に適応して生きていた。
染色体異常があるため妊娠のできない体で、尾てい部には謎の手術痕があった。
じつは、これら全てトロルの特徴だった、という話。
人類そっくりの別種なのだ。
人間としてコンプレックスをが抱えて生きてきたティーナだったが、同じトロルのヴォーレに出会ってコンプレックスからの開放を味わう。
文字通りの開放、まさにフルオープンである。
トロルは雄が卵を持っており、ヴォーレも定期的に未受精卵を排卵していた。
フルオープンの結果、ヴォーレは無事に妊娠したようで、ラストはフィンランドのトロルランドに辿り着いたヴォーレからティーナとの子供が送られてくる。
ヴォーレは自身を迫害した人類に復讐するため、人間の赤子と自身の身受精卵をすり替えていた。
そしてその赤子を人間の児童ポルノに売り飛ばして生計を立てていた。
そんな人類道に外れた行いも、トロルなんで関係ないと話すヴォーレ。
一方ティーナは誰も傷つけたくないと話す。
ラストはその方向性の違いから二人は別の道を歩むことになる。
結局ヴォーレもフィンランドのトロルランドにたどり着いたようで何よりである。
ティーナは我が子を手にしてご満悦。見事ハッピーエンドである。
なんとも暗く奇矯な映画。
独特すぎる感性で描かれるが、そのテーマは人類とトロルの境目という重いもの。
結局白人と黄色人種とか、人種問題と同じであることに気付けるかがキー。