【難解ループの傑作】映画「パラドクス」が5分でわかる!【ネタバレあり】

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2016年のメキシコ映画
出演者はエルナン・メンドーサ, ハンベルト・ブスト, ハーナン・メンドーサ, ネイレア・ノーヴィンド
永遠に続く世界に閉じ込められた人々と、その世界の秘密に迫るスリラー

こんな人にオススメ
・ループものが見たい
・巧みに線が張られた映画が好き
・極限状態に置かれた人々の動きを描いた作品が好き

映画「パラドクス」が5分でわかる!

あらすじ

終わらない階段

カルロスは弟オリバーを訪ねていたが、そこに刑事のマルコが踏み込んできて銃を突きつける。
カルロスとオリバーは犯罪に手を染めており、マルコは母親を殺すとオリバーを脅して自白を強要していた。
カルロスとオリバーは避難階段に逃げ、9階から階段を駆け降りる。
しかし追いかけてきたマルコが発砲したためカルロスが脚を負傷する。

オリバーはカルロスを抱えて階段を降りるが、その途中でどこからか爆発音がする。
ビルの階段はなぜか1階より下まで続いており、1階の下は9階になっていた。
マルコが階段を降りていくと再び1階に戻ってしまい、階段を降りる前と同じようにカルロスとオリバーがいた。

1階の踊り場には食料と飲料の自動販売機があったため、オリバーはペットボトルの水でカルロスの応急処置をする。
オリバーはマルコを責めるが、なぜ撃ってしまったのかマルコにもなぜかうまく説明できず、マルコのポケットには見知らぬミニトランプがなぜか入っていた。
マルコには妻と三人の娘がおり、この日は結婚記念日の食事に行く日だった。

閉じ込められて26時間、全部食べたはずの自動販売機の食料は全て自動販売機に戻っており、パニックになったマルコに、オリバーは銃を奪って突き付ける。

終わらない道路

舞台は10歳の少年ダニエルの一家に移る。
この日ダニエルは妹カミーラと母サンドラ、サンドラの再婚相手で血のつながらない父ロベルトと一緒に一家で実の父を訪ねる日だった。

ロベルトは車で一家を乗せ、目的地のホテルに向かっていたが、車内に見知らぬ竹の切れ端があることに気がつき捨てる。
ロベルトは途中立ち寄った無人のガソリンスタンドで、喘息持ちのカミーラには与えていけないジュースを飲ませてしまう。
カミーラは次第に体調が悪くなり呼吸が苦しくなっていたが、ロベルトは預かっていた吸入治療薬を誤って落として壊してしまう。

治療薬を取りに一度家に帰ろうとするが、ロベルトがどれだけ車を走らせても道は永遠に続いており、まっすぐ走っているはずなのに、元のガソリンスタンドに戻ってきてしまう。
時間がどれだけ経っても日は沈まず、ガソリンスタンドには食べたはずの食品がいつのまにか戻っていた。

カミーラの体調はますます悪くなり、とうとう意識を失い命を落とす。
サンドラとロベルトはいろいろ試すが、ここからは出られないことがわかるだけだった。

35年後

舞台は階段室に戻り、オリバーらが閉じ込められてから35年が経過していた。
カルロスは白骨死体となり、マルコは老人で立てなくなっていたが、オリバーは年こそとったものの日々筋トレをしていたため健康そのものだった。
階段室の壁にはマルコが書いた家族の絵やここでの日数を数えたカウントが所狭しと書かれており、踊り場の至る所にゴミが散乱していた。
その晩、深夜に突然目覚めたマルコは、突然マルコやその家族は存在しないと言い出し、自分はダニエルだと言い出す。

ダニエルらが閉じ込められて35年後の道路も同じような状況になっており、ダニエルはロベルトとサンドラとは別れて暮らしていた。
その日サンドラは老衰で息を引き取り、ロベルトはダニエルを呼び出していたが、ロベルトは突然頭を抱えて苦しみ出し、私はロベルトではないと言い出す。
ロベルトは幼い頃、遠足で指導員と竹の筏に乗っていた時同じ経験をしており、その時は友人のファンが亡くなり、指導員と筏の上で35年間を過ごしてた。
その後指導員が亡くなり、車に乗ったロベルトは元の名前を忘れ、そこにいたダニエルらの一家を乗せて走り出したのだと言う。

永遠の世界の秘密

それぞれ別の世界で死を迎えつつあったロベルトとダニエルは、この無限地獄は現実世界のための偽りの装置で、現実世界の幸せとエネルギーを産むための犠牲であるという。
無限地獄での35年間は、若年者の方がうまく過ごすことができ現実世界でもうまく行くが、年配者は無限地獄での時間を有意義に過ごせないという。
さらに無限地獄を抜けた時全てを忘れてしまうので、自分の名前を忘れないよう名前をしっかり書いておき、ダニエルは車に、オリバーはエレベーターに乗らないように言い残してそれぞれ息絶える。

その後ダニエルは35年間全く見ることのなかったパトカーを見つけ、迷いながらも結局乗り込んでしまう。
車内にあった手帳を見たダニエルは全てを忘れ、長く伸びた髪を切ってマルコになり、手帳に書かれていた通りカルロスとオリバーの元に向かう。

次の35年間へ

オリバーの前にもエレベーターが現れており、オリバーも迷いに迷った挙句エレベーターに乗り込む。
オリバーはその瞬間全てを忘れ、その中にあったカールという人物のエレベーターボーイの衣装を身につける。
そのエレベーターに、衣装と共にあった赤い手帳に書いてある新郎新婦が乗り込んできて、カールと共に30階で降りる。
しかし30階は出口のない廊下になっており、新郎はカールが逃したハチに刺されて死が迫っていた。

時は流れ、あるエスカレーターに老婆の死体が流れてくるが、その手には赤い手帳があった。

レビュー・考察

ちょっと変わった設定の難解なループもの。
階段や道路の様々なところで人々がループに閉じ込められるが、このループが35年周期で別の人々に引き継がれており、年代ループもしているためダブルのループになっている。
その設定はちょっと難解だが伏線は丁寧に張られており、きちんと見れば作中で説明されているのでわかるはず。

2周目を見るとその設定と伏線がとてもよくわかるので、ぜひ皆さんもループしてほしい。

ループまとめ

まず各世代のループを表にまとめるとこのようになる。

先先代1949年~先代1983年~現代2017年~?次代2052年~次次代2087年~?
舞台道路階段室廊下エスカレーター?
年配者指導員ロベルトマルコカール元新婦
若年者本名不明(その後のロベルト)ダニエルオリバー新婦
死亡者ファンカミーラカルロス新郎

現代は作中で年代が出てこないため不明だが、年代が明確な他の年代を参考にすると、最初の年を1年目と数えるようなので2017年と推定される。

若年者が35年のループを終えると赤い手帳で別の人物になってしまい、年配者として次の35年のループに入るを繰り返していることがわかる。
映画冒頭で出てきた新郎新婦は乗り込んだエレベーターでカールとのループに巻き込まれる運命にあり、エスカレーターを流れてくる女性は、その新婦が次のループで亡くなった姿であると思われる。
ルールに従うなら、新婦は年配者としてループしていたカール(元オリバー)が35年後に亡くなったことでループを抜けるが、その後エスカレーターのループに入り35年後に死亡したことになる。
エスカレーターで死亡した老婆は、役割を引き継ぐための赤い手帳を持っていた。

ループの特徴

・年長者、若年者、死亡者の3人が基本構成。
・爆発音がループ開始の合図になっている。
・必ず最初に死者が出る。
・ループ世界の物品は24時間で復活する。
・廃棄物は時間が経ってもなくならない。
・ループ世界でも時間は進むが、昼夜は変わらない。
・35年経つと年配者が亡くなり、出口が現れる。
・生き残るのは若年者で、次のループの年配者になる。

3人が基本構成だが、道路のループは例外的でロベルト、サンドラ、ダニエル、カミーラの4人だった。
サンドラは年配者に近い役割だったが、前のループの記憶を思い出さなかったことから年配者ではないと思われる。
また、死亡者が必ず出るよう年配者は捜査されており、ロベルトは無意識に吸入機を壊し、マルコは無意識に発砲し、カールはハチを解き放つが、いずれも自分の意思ではない。

ループの出口は車やエレベーターなど様々だが、必ず次の人物の衣装と赤い手帳が置かれている。
ループを出た若年者は前ループの記憶を完全に失っており、映画冒頭でマルコの服に毛髪が付着していたのは、このループに入る直前でダニエルが自ら散髪をしたからで、マルコのポケットにミニトランプが入っていたのも、ダニエルが持っていたからだが、マルコはそのことを全く覚えていない。
ロベルトの車に竹の切れ端が入っていたのは、ロベルトが前のループで竹の筏に乗っていたからである。

表世界とループ世界

若年者は次のループで年配者になるが、その年配者は実在の人物とすり替わる形で、次のループに入っている。
次のループが始まった段階で、世界線が二つに分かれ、現実の表世界とループの裏世界に分離している。

ロベルトは前のループを赤い車で脱した直後に家族を車に乗せ、そのまま次のループの裏世界にハマったことが本人の口から述べられている。
この時点で、ループにハマらなかった本物のロベルトの表世界と分離しており、本物のロベルトは無事ダニエルとカミーラを実の父のもとに送り届けている。

ループする裏世界は表世界で幸福とエネルギーを産むための犠牲であり、裏世界でもうまく過ごせる若年者は表世界でも幸福になり、裏世界でうまく過ごせない年長者は、表世界でも悲惨な人生になる。
映画のラストで描かれた各登場人物の表世界でのその後をまとめると
・ダニエル(若年者):警官になり結婚、幸せな家庭を築き三人の娘を授かる。
・ロベルト(年配者):サンドラと喧嘩し離婚、酒と女で財産を失ったまま老人になり、風呂で自殺。
・オリバー(若年者):脚を撃たれた兄カルロスを連れ階段を普通に降りてアパートを出る。カルロスは生存し、図書館で出会った女性と結婚し幸せな家庭を築く。
・マルコ(年配者):捜査ミスで逮捕され、老人になるまで刑務所暮らし。

無限地獄である裏世界は悲惨だが、表世界の人生が幸福とは限らないのが無情。
酒浸りになったロベルトや衰え立てなくなったマルコは、表世界も悲惨になっている。

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