「きかんしゃトーマス チャオ!とんでうたってディスカバリー!!」あらすじ&レビュー【ネタバレあり】

こどもとお勉強幼児向けコンテンツ

今回は劇場版きかんしゃトーマスの最新作を見て感じたクラシックシーズンとの違いと、
そこから見えた幼児教育の難しさをお話ししたいと思います。

概要

2020年公開の機関車トーマス劇場版15作目。
日本では2021年1月20日にDVDが発売された。
ソドー島でのスチームチーム誕生秘話とトーマスのイタリアでの活躍が描かれる幼児向けアニメ。

あらすじ

前編スチームチーム誕生秘話

ソドー島では今日も忙しく機関車たちが走り回り、自身の仕事に従事していた。
港ではクレーンのクランキーやディーゼル機関車たちがいつもどおり忙しくしていたが、
忙しすぎてソルティーが海に落ちてしまう。

ソルティーはディーゼル整備場に運ばれるが、そこでもアクシデントが起き、ディーゼル機関車たちが整備場から出れなくなってしまう。

このピンチにトップハムハット卿は蒸気機関車たちを総動員し仕事に当たらせる。
ディーゼル機関車の分も仕事をすることになった蒸気機関車たちは大忙し。

トーマスの親友のパーシーは港へヘルプに行ったものの、小柄なパーシーでは港の荷物は重くて全く進まない。
トーマスはパーシーを助けにいきたいとトップハムハット卿にお願いするも、他の仕事を頼まれてしまう。
日が暮れて、めちゃくちゃに忙しかった1日の疲れを癒そうとする蒸気機関車たち。

そんな彼らにトーマスは、パーシーを助けてほしいと檄を飛ばす。
蒸気機関車たちはパーシーのために徹夜で港の仕事を手伝い、一つのチームとなった。

後編イタリア編

トーマスはイタリアで、ジーナという機関車と友達になる。
ジーナから美しいイタリアと考古学を教わり、消えた機関車のウワサを聞く。

トーマスはある時、ジーナの代わりに海岸まで発掘物を受け取りにいくことになる。
海岸で、水陸両用船のステファノから荷物を受け取るトーマス。

しかしその帰り、曲がりくねった線路で道に迷い、鉱山跡に迷い込んでしまう。
そこで助けを呼ぶ声を聞いたトーマスは、消えた機関車のことかと思いつつも、ジーナが助けにきたため引き返す。

ジーナにこのことを話すと、消えた機関車は作り話で、声がしたのはトーマスのこだまではないかと言う。
イタリアでは考古学の博物館を建築中で、トーマスはそれを手伝うためソドー島の重機たちを呼び寄せる。

重機たちは珍しい発見をするが、トーマスはなんの発見もできず面白くない。
そんなトーマスがみんなと離れて走っていると、思わず鉱山跡に迷い込んでしまう。

そこで助けを呼ぶ声がこだまではないことに気がつき、鉱山奥でロレンツォという機関車に出会う。
ロレンツォこそが消えた機関車であり、彼を助けて鉱山をでるトーマス。
鉱山の先は海に切れ落ちており、ステファノが助けにきてことなきを得る。

トーマスのこの発見はジーナにも賞賛され、また伝説を残すのだった。

レビュー

原題はDigs  and  Discoveryである。歌って飛んでってどこからきた…

本作では新しい試みが行われており、前編のソドー島編と後編の2部構成となっている。
昨今の機関車トーマスシリーズではトーマスの海外遠征が続いているが、ソドー島のエピソードもやはり根強い人気があるのだろう。

まずソドー島編、ピンチに陥ったディーゼル機関車たちを、蒸気機関車たち助けるというもの。
実に王道的な展開なのだが、クラシックシリーズを知っている世代からすると違和感がすごい。

だって、トーマスとパーシーはかつて「臭いディーゼル」とか言って差別発言を繰り返していたのだ
※詳しくははシーズン6エピソード11を見てほしい。

劇場版6作目「ディーゼル10の逆襲」で、蒸気機関車とディーゼル機関車に和睦が成立したとはいえ、すごい手のひら返しである。

世界の良い子にいい話を送りたいという、制作チームの気持ちはわかるのだが、
激辛香辛料のようなクラシックシリーズのスパイス加減がちょうどよかったスレた大人にはちょっと物足りない…

いや、お子さんの教育にはもちろん、今の作風の方がいいんだけどね。

後編はイタリア編、機関車トーマスの営業部長トーマスさんによる海外出張シリーズである。
劇場版前作「Go!Go!地球丸ごとアドベンチャー」ではアフリカ➡︎ブラジル➡︎アメリカ➡︎中国と渡り歩いて海外出張してきたトーマス。今回はイタリアである。

イタリア美人のジーナに出会えて、心なしか笑顔が多いように見えるのは、私が心が濁った大人になってしまったからなのだろうか…??

さて、話の筋としてはトーマスが消えた機関車を探す冒険譚で、意外性はない。

むしろ意外だったのは、建築現場の車両たちが登場したことだ。
ショベルカーのジャックは、劇場版第8作「キングオブザレールウェイ」でも見どころがあったので驚かないが、まさかダンプカーのマックスとモンティまで出てくるとは…

彼らの初登場はテレビ番第6シーズン、まだ人形劇だった頃である。
この頃のマックスとモンティは乱暴者で、問題児としてジャックからも煙たがられていたのだ。
それが本作では、陽気なちょいワルみたいなキャラに変わっているではないか。
お子さんのより良い教育のためなんだろうけど、やはりスレた大人にはスパイスが物足りない…

娯楽ではなく、教育コンテンツとしての機関車トーマス

今でこそ、機関車たちは角もとれ、すっかり丸くなっている。
なので、今回みたいにみんなで力を合わせて危機を乗り越えよう!みたいな話となっている。
非常にいいことだし、お子さんにはこういう世界で生きて欲しいという願いはよくわかる。

一方、人形劇のクラシックシリーズはどうだろうか?
いじわるなやつ、尊大なやつ、陰湿な嫌がらせ、対立、差別と汚い世の中をまざまざと見せつけてくる。
子供にこんな汚いものを見せるのは望ましくない。

ましてや機関車トーマスは今や世界のトーマスだ。
世界の子供に夢と希望を届けたいと、今の作風の娯楽作品になったのは想像に難くない。

しかし本当にそれで良いのだろうか?
その子供も、いつかは世の汚さにぶち当たる時が来る。
その時、クラシックシリーズの機関車トーマスの世界観が当たり前なら、そういう奴もいるよね。
くらいで大して失望しないのではないだろうか?

そう、かつての機関車トーマスはスパルタ式英国教育によるいわば、汚い世の中へのワクチンだったのだ。
最近の子供は打たれ弱いとか言われるけど、そういう綺麗な世界しか教えていない大人に原因があるのかもしれない。

きかんしゃトーマスがかつての作風を取り戻し、子供に世間を教える教育コンテンツとして蘇ってくれることを切に求めてやまない。

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期待の新星??

ロレンツォはなぜ消えた機関車として放置されていたのだろうか?
機関車1台がいなくなるというのは、同僚が仕事中消えるようなものなので、当然大捜索が行われるはず。
場合によっては警察や軍隊が捜査に乗り出すこともあっただろう。

しかしこの事件、ジーナやステファノからウソの作り話としてトーマスに伝えられていたのだ。
普通なら過去の痛ましい事件としてトーマスに伝えられなければならない事だろう。
それを隠そうとしたあたり、ロレンツォが見つかると彼女らに何か不都合があったとしか思えないのだが、どうだろうか?

単なるイタリア的大雑把さで作り話になっていたのならいいのだが、
ロレンツォが触れてはいけない秘密に触れてしまったような、そういう後ろ暗さを感じるのはやはり私が汚れた大人になってしまったからなんだろうか?
何よりこの事件、結果として機関車は助かったが、運転手はすでに死亡して運転席でミイラになっていたことだろう。

イタリア南部のマフィア社会との繋がりとか、そういうのを暗に示しているとしたら、
美しいジーナはクラシックシリーズの正当な後継者となれる器だと言えるだろう。

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