2018年のアメリカ映画
出演者はシャーリーズ・セロン、マッケンジー・デイヴィス、マーク・デュプラス
子育てに悩む母親が、不思議なベビーシッターを雇うドラマ映画
こんな人にオススメ!
・子育て中のお父さん、お母さん
・なんでも一人でやろうとしてしまう方
・アメリカでの育児に興味のある方
映画「タリーと私の秘密の時間」が5分でわかる!
あらすじ
・育児に疲弊するマーロ
キャリアウーマンのマーロは、お腹にいる三人目が臨月を迎えたため産休に入る。
マーロにはサラとジョナ二人の子供がいたが、長男ジョナには知的障害の疑いがあり、通っている小学校からはヘルパーの雇用を勧められていた。
そんな時資産家の兄クレイグの一家に食事に誘われたマーロは、グレイグの一家がベビーシッターを雇い悠々自適の生活を送っていることを知る。
グレイグはマーロにも夜間だけベビーシッターを雇うことを勧め、出産祝いにその権利を贈るが、マーロは赤子の世話を他人に任すことに抵抗を覚えていた。
マーロは女の子ミアを無事に出産するが、夜中何度も起こされ次第に疲弊していく。
さらにジョナが小学校から転校を勧められるようになり、マーロは教員に激怒しヒステリーを起こしてしまう。
追い詰められたマーロはグレイグが雇ったベビーシッターに連絡をとり、自宅に来てもらうことにする。
・不思議なベビーシッタータリー
その夜マーロの自宅を訪ねたベビーシッターのタリーは、マーロの予想に反し若い女性だったが、その仕事は優秀で朝になると忽然と姿を消していた。
タリーは博識な上聞き上手で、人を頼るのが苦手なマーロも次第に心を開いていく。
転校したジョナは、新たな学校で早速パニックを起こしてしまうが、教師が機転を効かせ助けてくれる。
タリーと出会ってからというものマーロの精神にも余裕が出始め、子供たちとの関係が良くなるなど事態は良い方向に向かっていった。
そんな時、マーロはタリーに夫ドリューの話をする。
ドリューがウェイトレスに憧れていることを知ったタリーは、ウェイトレスのコスプレをし、マーロと共にドリューの寝室に忍びこむ。
家庭はすっかり明るさを取り戻し、ドリューはグレイグに礼を言うが、タリーが朝忽然と姿を消すことについてはなかなか相談できないでいた。
・タリーとの別れ
ある時、マーロはいつも通りタリーを待っていたが、タリーはいつもよりかなり遅れて来た。
マーロが事情を聞くと、タリーのルームメイトはトラブルメーカーだという。
マーロはタリーに一人暮らしを勧め、女は忘れないから傷つく伝え方をしないようアドバイスをする。しかしタリーは女は忘れるから正直に伝えれば良いと主張する。
納得できない表情のタリーだったが、突然マーロを飲みに行かないかと誘う。
ミアの子守りをドリューに任せ、マーロはタリーと昔住んでいた街ブルックリンに向かう。
マーロはタリーと夜の街を楽しむが、タリーは突然ベビーシッターを辞めると言う。
マーロは、先に進むためだというタリーに30代になると何もかも見苦しくなってしまうと話すが、タリーはマーロが家族となんでもない日常を繰り返すという大きな夢を手に入れたと話す。
マーロはかつてルームメイトと住んでいた家にタリーを連れて行くが、授乳していないマーロの乳が張ってしまったので自宅に戻ることにする。
しかし飲酒運転をしていたマーロは居眠りをしてしまい川に車ごと落下、病院に運ばれる。
・家族の幸せ
マーロを診察した医師はマーロが極度の睡眠不足で心の病を患っているという。
ドリューはベビーシッターが来てからマーロはよく眠れておりそんなはずはないというが、その実彼女の名前すら知らなかった。
病院の手続きで、マーロの旧姓を聞かれたドリーが答えたその名はタリーだった。
入院しているマーロの元にタリーが別れを告げにくる。
タリーは若い時のマーロその人で、マーロが危機的状況を脱したことを伝え姿を消す。
ドリューはマーロの孤独に気がつけなかったことを詫び、家事と育児を手伝うようになり、家族は平穏を取り戻すのだった。
レビュー・考察
みなさん育児していますか?
アメリカでは仕事も家庭も夫婦で折半と言いますが、どうやら現実ではそうでもないようです。
この映画はバリバリのキャリアウーマンで三児の母でもあるマーロが、育児に疲れ果ててしまう話です。
バリキャリだったため人に頼ることを知らず、夫ドリューも仕事で忙しかったので、マーロは一人で全てを抱え込んでしまう。
現実逃避がマックスに達した彼女は、やがて空想上の人物を作り上げる。
その人物こそがタリー、26歳の時のマーロ自身です。
齢40を超えたマーロは今の人生が良いものなのか確信が持てずにいた。
出産で太った体と衰える体力、同じことの繰り返す毎日ですり減らす精神。
習っていたイタリア語だってすぐに忘れ、スキルだって失われていく。
そんな彼女はふと思ったに違いない。
「過去の私が、今の自分を見たらどう思うのだろうか…?」
そしてタリーという妄想のベビーシッターを召喚、今の自身の話を聞いてもらうことになる。
タリーはマーロを否定するのかと思いきや全面的に肯定。
むしろ家族と変わらない毎日を送るという大きな夢を叶えたと言う。
実はマーロは複数の継母に育てられており、同じ経験を子供にさせたくないと劇中で語っている。
マーロの真の願いは子供を安定した環境で育てることで、毎日の変わらない日常はその願いが叶ったことの証だとタリーは指摘したかったのだろう。
しかし願いが叶ったマーロは別の可能性を信じたくなってしまう。
「もし、結婚も出産もせず自身のキャリアを構築していたら…」
そう思ったに違いない。人間ってのは常に無いものねだりだ。
マーロが失った可能性を体現した人物として現れるのが、マーロの元ルームメイトのヴァイ。
ヴァイはかつてマーロと住んでいた部屋に今も住んでおり、その家をマーロとタリーが訪ねるシーンがある。
ここでマーロが何を見たかは明確に語られないが、おそらくヴァイは今も出産せず自身のキャリアを築いていたのではないだろうか。
それを見てマーロが何を感じたかは定かではないが、この後タリーはマーロの前から姿を消す。
ちなみに中盤で、タリーがルームメイトと揉めてベビーシッターに遅刻するシーンがある。
マーロはルームメイトを傷つけないよう別れるように勧めるが、タリーは傷付けてもすぐ忘れるからはっきり言うべきと言う。
おそらくマーロは過去ヴァイを傷つけて別れたのだろう。
そのことが今も尾を引いているのが、映画冒頭でヴァイと再会したマーロの微妙すぎるリアクションに現れている。
女は恨みを忘れないから傷つけないように別れろと言う言葉も、若き日の自身には届かない。
それだけマーロが後悔し、成長してきたことを表現しているシーンとなっている。
結果として、タリーのおかげでマーロの精神は落ち着きを取り戻し、一時は明るく回復した。
しかし現実的な状況は全く改善していないので、育児から逃亡し事故を起こすことになる。
夫ドリューには、一見マーロが回復したように見えてしまったのが不運。
実はタリーが存在していないことに気がつけなかった。
ドリューがタリーとは一度も会っていないのがキーポイント。
一度だけタリーがマーロとドリューのベッドに来るが、その目にタリーは映っていない。
というかドリューはマーロがベビーシッターを使っているらしい、ということぐらいしか把握しておらず、その姿はおろか名前すら知らなかった。
まぁベビーシッターが来るという初日に会いもせず、ゾンビゲームにハマっているぐらいだからな。
こればかりは赤ちゃん預けるんだから、どういう相手かぐらい興味持てよと言わざるを得ない。
ラストはマーロの負担に気がつけなかったドリューが反省して、マーロの手伝いをするようになってエンド。
知的障害の疑いがあったジョナも、マーロといることが大切と伝え、その愛を確かめ合う。
ジョナの奇行にマーロはかなり苛立っていたから、ジョナの気持ちを思うと切ない一コマである。