2024年のスペイン映画
出演者はフランシスコ・オルティス, ホセ・マリア・ヤスピク, ベルタ・バスケス
襲いくるゾンビから逃げ延びる人々を描いたパニックスリラー
こんな人にオススメ!
・近代ゾンビものをダイジェストで見たい
・徐々に崩壊する日常を眺めたい
・猫好きの方
映画「アポカリプスZー終末の始まりー」が5分でわかる!
あらすじ
徐々に崩壊する日常
マネルが交通事故で妻を亡くしてから1年経った。
その間に人が凶暴化するTSJウイルスは世界中で蔓延し、人々は感染を封じ込めながらなんとか日常生活を続けていた。
マネルは妻のいなくなった家で愛猫ルクロと暮らしていたが、マネルの生活を心配した姉ベレン夫妻の好意でカナリア諸島の新居に行くことになる。
しかし空港でマネルが飛行機に乗り込むところで新たな変異型ウイルスが見つかり、空港は閉鎖になってしまう。
仕方なくマネルは車で自宅に帰ろうとするが、道路は大渋滞となっていたためマネルは途中で車を乗り捨て自宅に帰る。
自宅に戻るとベレンから着信があり、これから政府が作る隔離地帯に行くと人々が密集しているため感染リスクが高まるので、ベレンが迎えに行くまで自宅を決して出ないよう言われる。
非常事態宣言により街はロックダウンされることになったため、マネルは食料を買い込むためスーパーに向かうが、店員のいなくなったスーパーではすでに略奪が始まっており、大した食料は手に入らなかった。
スーパーからの帰り道、ガソリンスタンドに立ち寄ると警察官が感染者に襲われており、感染者に噛まれた警察官はその後の運命を悟り拳銃で自決する。
その夜、TSJの感染拡大は世界中で広がっており、すでに制御不可能なことが政府より発表される。
大都市のロックダウンの延長と小規模な都市の軍隊による強制的な住民の避難が決まり、マネルの元にも軍人が訪れるが、マネルは隠れてやり過ごし、一人自宅に残ることにする。
誰もいない街
1ヶ月後、マネルはメッセージを入れた動画をベレンに送り続けていたが、通信が制限されているためチャットに溜まる一方だった。
マネルは誰もいなくなった街で空き屋になった家に侵入し食料を探し回っていたが、ある家で避難に取り残された老婆と出会う。
老婆は付近の住民事情に詳しく、マネルはその情報を元に家々に侵入し食量を入手、さらにはバイクまで手に入れることに成功する。
老婆は家族に置いて行かれたため、一人で暮らしており、マネルとお互いの身の上話をするうちに意気投合するようになる。
マネルは自身が所有する船でカナリア諸島を目指す計画を立て、老婆にも一緒に行かないかと誘う。
しかし無線で話していたはずの老婆から応答がなくなり、不審に感じたマネルが老婆の家を訪ねると老婆はすでに亡くなっていた。
マネルは一人バイクで港に向かうが、幹線道路は封鎖されていたため山道を通って行こうとする。
しかし山中のキャンプ場には大量の感染者がおり、マネルはなんとか逃げ切るも転倒した衝撃でバイクが動かなくなってしまう。
マネルは山道を走って逃げ、なんとか港にたどり着くもそこに船はなく、何者かに盗まれた後だった。
残ったクルーザーを見つけるもエンジンはかからず、物置には感染した赤子が一人感染者独特の奇声をあげて泣いていた。
奴隷タンカー
マネルはボートでカナリア諸島に向かうが、洋上で偶然出会ったタンカーに助けを求める。
タンカーにはビクトルと名乗る人物らが乗っており、船長はマネルに食事と部屋を与える見返りに物資のある場所の情報を求めていた。
その夜、マネルはタンカーに助けを求めにきた家族を見かけるが、翌朝ビクトルにそのことを尋ねても、誰も来なかったの一点張りだった。
この船の不審さに気づいたマネルは密かにタンカーを抜け出そうとするが、タンカーの深部から聞こえる呻き声に気が付き、その呻き声を辿っていくとそこには助けを求めていた一家の男たちだけが拘束されていた。
マネルは男たちの拘束を解こうとするが、船員に見つかり撃たれそうになる。
しかしそこにビクトルが現れマネルを助け、そのままビクトルはマネルとはボートに乗り込み逃げようとするが、船員の銃撃を受け重傷を負う。
病院
浜辺に着いたマネルは置いてあった車に乗り、カナリア諸島に向かうため病院にあるヘリコプターを目指す。
しかしヘリコプターの姿はすでになく、マネルは感染者を銃で倒しながらビクトルを抱えて病院に入る。
マネルはビクトルの銃弾を取り除くための準備をしていたが、病院の何処かより声が聞こえることに気がつく。
マネルは換気口の奥から声がするのを突き止めるが、大量の感染者が現れたため追い詰められる。
その時貨物用のエレベーターの扉が突然開き、中からルシアという女性が救いの手を差し伸べる。
着いた先にはシスターセシリアと3人の孤児がおり、3人の孤児はマネルの愛猫ルクロを可愛がる。
ビクトルはセシリアとルシアによる弾丸摘出手術を受け、ビクトルは一命を取り留める。
ルシアは中庭にヘリがあるが感染者に囲まれていること、中庭には爆発音のするボイラー室から行けることマネルに教える。
マネルは病院の屋上で昔ベレンから送られた動画を見て、その温かさに涙し元気を取り戻すが、病院には怪しげな武装集団が物資を求めて近づいていることに気がつく。
脱出、その先に
マネルは武装集団から逃れるため、全員を連れ燃え盛るボイラー室を抜けようとするが、出口の扉が熱で変形して開かなくなっていた。
ルシアはドアを破壊して強引に開けるが、その先から感染者が飛び出してきてシスターセシリアが犠牲になる。
マネルは感染者が大量にいる通路を抜けようとするが失敗し、小部屋に追い詰められる。そこに武装したガラの悪い集団が現れ無差別に感染者を撃って行ったため、マネルは九死に一生を得る。
中庭には大量の感染者がいたためマネルらは荷物用のカートで周囲を囲ってヘリコプターに近づき、感染者を振り切ってヘリコプターに乗り込む。
しかしエンジンがかからずにいるところに銃を持った集団が現れ、ヘリコプターを奪われそうになる。
マネルは柵で押さえていた大量の感染者を解き放ち、その隙にヘリコプターを飛ばすことに成功する。
マネルらがカナリア諸島に向かっていると、スマートフォンが通信を回復し、ベレンから着信が入る。
マネルが喜んだのも束の間、ベレンはカナリア諸島には絶対に来ないように強く言う。
そしてその直後、マネルらは彼らが乗ったヘリコプターを戦闘機がすごい速さで追い越しカナリア諸島に向かっていくのを見るのだった。
レビュー・考察
全力疾走型近代ゾンビ映画。
本作のゾンビは、古風なタイプのゾンビと違い、全力疾走してくるのでとても動きが早い。
なんなら感染前より運動能力が上がっているのか、びっくりするような跳躍力を見せ襲いかかってくる。
原因はもちろんウイルス、噛まれることで血液感染するのももはやゾンビ映画のお約束だ。
猫のルクロは本作の癒し枠。
終始生き延びてくれと祈らずにはいられない。
徐々に崩壊する日常
よくあるゾンビ映画だが、序盤の崩壊が徐々に迫ってくる描写が実によく描けている。
最初政府はウイルスは完全に封じ込められていると発表しており、人々も不便しながらも日常生活を送っている。
スーパーでは一人一つの商品を、ある人が一人で何個も買っているよう、ちょっとモラルが崩れた日常風景が描かれている。
その後、潜伏期のない新型ウイルスが見つかったのがターニングポイント。
空港は閉鎖になり、非常事態宣言が出て、大都市のロックダウンと小都市の強制避難が始まる。
スーパーの風景感も一変し、店員がいなくなった店内では略奪が始まり、マネルが手にしていた商品も、横から老人が強奪していくなど完全にモラルが崩壊してしまう。
感染者の存在も最初はニュースの中の存在だったが、マネルが空港から帰ってくると知人がゾンビ化していたり、非常事態宣言が出てからは訪れたガソリンスタンドにも感染者が出現し、噛まれた警官が自決するなど完全に日常が崩壊してしまった。
徐々に迫り来る日常崩壊の過程の描写が、実に丁寧に描かれている。
よくある近代のゾンビ映画
中盤以降は誰もいなくなった街でマネルが生き延びるサバイバル編、感染者よりも恐ろしい悪質な人間を描いたタンカー編、まともな人々と出会い脱出を目指す病院編と他のゾンビ映画で見たような展開が続く。
タンカー編に出てきた船長は、崩壊した世界を楽しんでおり、助けた人々を奴隷として働かせ組織を拡大、ゆくゆくは島一個を乗っとって独立王国を作ろうとしていた。
ウォーキングデッドなら船長とマネルが決戦を行い、船長が倒されるところだが、マネルは一介の弁護士である。そんな武力もなく、タンカーから逃げ出すしか無い。
話の本筋はマネルがカナリア諸島に向かうことであるとはいえ、悪役放置で物語が進むあたりハリウッド映画とはちょっとノリが違っている。
ゾンビでヘリは…
ゾンビでヘリ脱出といえば、某老舗ゾンビアクションゲームを連想せざるを得ず、もう墜落する気しかしない。
そんな勝手にハラハラしていた視聴者を尻目にヘリは無事飛び立ち、マネルらはカナリア諸島に向かうが、やっと電話の繋がったベレンはカナリア諸島には絶対に向かうなと言う。
このシーン決死の覚悟でカナリア諸島に向かっていた一行の空気が凍りつくのがよく伝わってくる。
カナリア諸島で何かが起こったのは明白だが、何が起こったのかは語られず、その後は視聴者の想像に委ねられている。
映画序盤のニュース映像で、でカナリア諸島にはスペイン政府の臨時司令室があるのがわかっている。
ベルンは夫マリオの仕事の都合でカナリア諸島に引っ越すと言っていたので、マリオは政府関係の人間である可能性が高い。
そのマリオが迎えに行くまで家で待っていろと言うので、マネルは隠れて強制避難を逃れていたが、迎えを待ちきれず自力でカナリア諸島を目指すことにしていた。
しかし映画は戦闘機がカナリア諸島に向かっているシーンで終わるので、感染者か人間の悪意でカナリア諸島の臨時司令室で崩壊したものと思われえる。
絶望から逃げた先で絶望にあう絶望的なラストとなっている。
続編があるのだろうか…