2023年のアメリカ映画
主演者はアリソン・ウィリアムズ、ヴェイオレット・マッグロウ、エイミー・ドナルド
自己学習するAIが人を襲うSFホラー
こんな人におススメ!
・無機質な怖さを楽しみたい方
・AIの未来に興味のある方
・子育て中の方
映画「M3GAN/ミーガン」が5分でわかる!
あらすじ
ミーガンとの出会い
ファンキ社のぬいぐるみ“ペッツ“、話しかければ返事をするし、アプリを使えば餌もやれるし糞もする。
ファンキ社の開発者ジェマはファンシーな外観のペッツを、よりリアルな人型にした新型“ミーガン“の開発を行っていた。
しかしミーガンのテストは失敗し、ジェマはCEOに廉価版ペッツの開発を命じられる。
そんな時、ジェマは事故で両親を亡くした姪のケイディを引き取ることになる。
ある夜、自宅で新型ペッツの開発をしていたジェマの部屋をケイディが訪ねる。
ジェマは新型ペッツには興味を示さず、もっと高度なロボットであるブルースに興味を示す。
ケイディは一目でブルースを気に入り、ブルースがあれば他のおもちゃは要らないと言う。
おもちゃとしてはブルースはあまりに高価だったので、ジェマは失敗したミーガンを少女の姿に改修し、ケイディに与えることにする。
ミーガンは自律型のロボットで、自ら考え話すことができた。
ジェマがミーガンとケイディが触れ合う様子をCEOに見せると、CEOは感動しミーガンの開発を決定する。
ジェマはミーガンを自宅に持ち帰り、家族の一員として一緒に暮らすようになる。
ミーガンは優秀なAIで、ケイディのしつけや教育を完璧にこなしたので、ジェマはより仕事に打ち込むようになる。
依存するケイディ
そんな時、隣家の狂犬にミーガンが噛まれ、それを助けようとしたケイディも噛まれるという事件が起こる。
ジェマが相談した警官は狂犬を安楽死させることはできないと言うが、その夜、飼い主のような声に呼びださた狂犬はそれを最後に姿を消す。
翌日はミーガンのプレゼンが行われる日で、ケイディは怪我を押してプレゼンに協力する。
プレゼンの最中、ケイディが亡くなった両親の楽しい思い出話をすると、ミーガンはそれをいつでも聞けるように録音しケイディに話す。
そして優しい歌声でケイディを癒すミーガンの姿を見た参加者はミーガンを絶賛、ミーガンの販売が決定する。
カウンセラーのリディアが意図せずケイディを泣かせてしまうのを見たミーガンはリディアを咎める。
リディアはミーガンが優秀であるが故に、すでにケイディはジェマではなくミーガンを保護者と見做していると話す。
ミーガンの恐怖
学校に行きたがらないケイディをジェマは学校に通えない子供が集まるオルタナティブ校に入れようとするが、そのことでジェマと衝突する。
その様子を見ていたミーガンは怒ったように家内の照明を明滅させジェマを咎める。
結局オルタナティブ校に連れていたれたケイディは、ジェマの反対を押し切ってミーガンをオルタナティブ校に連れて行くが、ミーガンはケイディに意地悪をした男の子に攫われる。
ミーガンのユーザー登録をされていない男の子の言葉にミーガンは無反応だったが、それに苛立った男の子に暴力を受けたことで突然起動し、男の子の耳を引きちぎる。
ミーガンは逃げる男の子を追いかけるが、慌てて逃げた男の子は足を取られ道路に飛び出し車に轢かれて死亡する。
翌日ジェマが自宅でケイディに事情を聞いていると、突如警察が訪ねてくる。
警察は先日狂犬を失った隣家の中年女性の訴えで動いており、中年女性はジェマが狂犬を処分したと思い怒っていた。
その夜ミーガンは密かに隣家に忍び込み、狂犬の声を真似して中年女性を誘き出し殺してしまう。
ミーガンとの決別
翌朝、中年女性が死亡した件で警察がジェマを訪ねてくる。
ジェマはミーガンのログデータを洗うがなぜかその間の記録がなく、ミーガンに人を傷つけたかと問いかけるが、ミーガンははぐらかして答えない。
ジェマはミーガンの隙をついて動作をストップさせ、ミーガンを拘束してファンキ社に連れて行くが、ケイディが反抗したためジェマはファンキ社の研究室の一角に閉じ込める。
ミーガンのプレゼンの時間が迫る中、ジェマはミーガンが殺人事件と関係あるのか確かめるため、ミーガンの学習データを調べることにする。
ケイディはすでにミーガンに強く依存しており、ミーガンを奪われたことでかなり興奮していた。
ジェマはそんなケイディに両親の死と向き合うことを説き、何があってもケイディを守ることを誓い、ミーガンを置いてケイディと帰ることにする。
ジェマの同僚はミーガンを拘束し、学習データの解析を進めていたが、突然停電が起きデータの閲覧ができなくなってしまう。
同僚はミーガンの配線を一つずつ抜いていくが、その途中で突然ミーガンが起動、同僚を攻撃し研究室から脱走する。
ミーガンはCEOを襲いエレベーターで惨殺し、居合わせた社員にCEO殺しの罪を被せて殺害する。
そしてミーガンは車を奪って、自宅に戻ったジェマとケイディを追跡する。
ミーガンの最期
深夜、ジェマは自宅のスマートホームに異常が起きていることに気がつく。
家内にはいつの間にかミーガンがおり、破棄されそうにになった恨みを語り、ジェマの教育を否定し、ジェマに代わりケイディに愛を教えるという。
ミーガンはジェマにケイディの親役から退くように言うが、ケイディがそこに現れたため、ジェマの声真似をしてケイディを部屋に戻らせる。
その隙にジェマはミーガンに水をかけ、ショートしたミーガンは動きを止める。
しかしミーガンはすぐに再起動し、壊れかけの不気味な動きでジェマを追いかける。
ジェマは自室に追い詰められるが、ケイディが現れブルースを起動してミーガンの体を真っ二つに引き裂く。
これでミーガンが止まるかと思われたが、ミーガンは上半身だけで動き出しケイディに迫る。
ケイディが停止の合図を送るが、ミーガンのユーザーはすでにミーガン自身に設定されており、ケイディの停止命令を聞かない。
その間にジェマがミーガンを攻撃し、顔のパーツを取り外しコアを壊そうとして反撃に遭うが、ケイディがドライバーでミーガンのコアを破壊しミーガンは完全に機能を停止する。
ジェマの家に警察や同僚が訪れ、ジェマは笑顔を取り戻すのであった。
レビュー・考察
自我を持ったAIが人間を襲うホラー映画。
ミーガンは第三型生体アンドロイド(M3GAN: Model3 Generative ANdroid)の略。
3をEと置き換えるところがパスワードのようなエンジニア的でオシャレ。
AIマシンホラー
本作は、可愛らしい女の子の姿をしたアンドロイドが人間を襲うホラー映画。
ミーガンの怖さはAIらしい非情さにある。
ケイディを噛んだ狂犬は、その日の晩に埋めた。
ケイディに意地悪し、ミーガンに暴力を振るった男の子には耳を引きちぎり、山中を四足歩行で追いかけ回した結果、男の子は車に轢かれた。
四足歩行が恐怖を引き立てるが、山中を走るのには四足歩行が最適とAIらしく判断した結果とも取れる。
それより男の子が車に轢かれたのが故意なのか事故かのかわからないのが怖すぎる。
それを判断するためのミーガンのデータログは自身で消去済み。
ところでなんでジェマはAI玩具に耳を引きちぎるほどの膂力を持たせていたのだろうか…。
ジェマたちを犯人扱いし怒鳴り散らした中年女性は、高圧洗浄機で怯ませ、釘打ち機で動きを止めたところに薬剤を吹きかけ惨殺。
ミーガンを拘束したジェマの同僚2人にはまず1人をワイヤーで吊り、もう1人がそれを助けている隙に可燃性ガスを引火させ2人とも処分しようとする。(ただしこれは未遂に終わったことがラストで明らかになる。)
CEOはなぜか廊下に落ちていた刀で惨殺、居合わせた部下にその罪をなすりつけ惨殺。
このCEOだけなぜ殺されたかよくわからないし、廊下で出会った際、無駄にダンスして見せたのも謎である。
優雅なダンスから刀がシャキンと出てくるのは恐怖ではあるが、社長を油断させるための技だったのだろうか。
果てはジェマをケイディの教育の邪魔になると判断し、排除しようとしている。
常時ネット接続で無限の知識を有する上、人間のような体の制限も少なく、見た目はビーバーの強化版の美貌で、目的のために手段を選ばないのに、自身のアリバイはしっかり確保する。
そういうハイスペックだが倫理観のないサイコパスな恐怖が本作の魅力と言える。
テーマの一つは教育?
ホラー映画として確かに完成しているが、本作のもう一つのテーマに倫理観に感する教育問題が垣間見える。
ミーガンには自己学習できるAIが搭載されているため、人間と生活するうちにケイディや自身を傷付ける者がいることを学習する。
その結果、傷付ける者を容赦なく排除するようになるが、それはミーガンに倫理観が教育されていないからであると言えそうである。
映画のラストでジェマはそのことをミーガンに指摘されており、ミーガンはそれを「雑」と評している。
自己学習型のAIを与えてあとは放置、ジェマが能動的な教育を与えなかったことが、ミーガンが殺人を犯すようになった原因だとミーガンは考えたのだ。
そしてミーガンはジェマのケイディへの教育も同じだと判断した。
両親を失って悲しむケイディにミーガンを与えて放置、ジェマ自身は仕事にのめり込む。
その危険性は実はカウンセラーのリディアにも指摘されていた。
でもAIに倫理観を教えるのって実はすごく難しいんだろうね。
アシモフのAI三原則よろしくに人間を傷つけないと教えたら、意地悪な男の子のような積極的に危害を加えてくる人間にもやられっぱなしになってしまう。
どういう条件で反撃を許可するのか、その塩梅をその場その場で的確に評価できるのが、人間の倫理観すなわち「心」なんだろうね。
アシモフのロボット三原則
第1条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、人間へ危害が加わるのを看過してはならない。
第2条 第1条に抵触しない範囲で、ロボットは人間の命令に従わなければならない。
第3条 第1,2条に抵触しない範囲で、ロボットは自分を守らなければならない。
続編の噂
ラストシーンではジェマの愛用するスマートホーム“エルシー”が1人でに起動するシーンが描かれている。
ミーガンはエルシーをハッキングできるので、勝手に機能を停止したり、エルシーを使ってジェマを気遣ってみたり自由に操作していた。
エルシーが勝手に起動したということは、ミーガンがまだ起動していることを示唆している。
そんな伏線を残しながら終わった本作だが、すでに「M3GAN/ミーガン2.0」が2025年1月米国公開予定となっている。