2017年のアメリカ・カナダ合作映画
出演者はアマンダ・シュル、マイロ・ヴィンティミリア、 ショーン・アシュモア
妻子の失踪事件を追うFBI捜査官が、偏屈な男の農場の真相を探るスリラー
こんな人にオススメ!
・ちょっと変わったエイリアンものが見たい
・家族愛を感じたい
・人物評価の一変する作風が好き
映画「アブダクション」が5分でわかる!
あらすじ
奇妙なプリチャード家
アメリカの平野のど真ん中で車が故障した男は、近くにあったプリチャード家に助けを求めるが、庭に仕掛けられたトラップにかかり男は死亡する。
プリチャード家の主人ジャクソンは男の死体を見つけると庭に埋葬した。
その頃、FBIのフランシス捜査官は、ジャクソンの妻子が失踪した事件で、地域の保安官を訪ねていた。
フランシスは過去の事件で少女を救えなかった後悔からこの事件を志願しており、副保安官のコルトと失踪しジャクソンの姉を訪ねる。
姉の話によるとジャクソンは息子ジョナを監禁するなど異常な行動が目立っており、ジョナのノートには悪魔のような絵が描かれていた。
フランシスはプリチャード家を捜査しようとするが、コルトはすでに捜査したとして止める。
しかしフランシスはジョナが書いた悪魔のような父ジャクソンの絵を見せ、コルトとプリチャード家に踏み込むことにする。
コルトがまずは家を訪ねるが応答はなく、フランシスが裏手に回り込んで捜索する。
しかしガレージでジャクソンに銃を突きつけられ家を追い出される。コルトがジャクソンと話している隙にフランシスはジャクソンの銃を奪い、コルトが手錠をかけ妻子の居場所を聞き出そうとする。
フランシスはプリチャード家の内部を捜索しようとするが、庭にはトラップが仕掛けられており、家に入るにも一苦労だった。
家の中でフランシスは堅く閉ざされた扉があるのを見つける。
扉の前には大量の武器が積み重ねられており、フランシスが扉を開けると地下へと続く階段があった。
地下室ではジャクソンの飼い犬が激しく吠えており、地下牢には見たこともない生き物が捕えられていた。
地下牢の秘密
フランシスがジャクソンに問いただすとあれは悪魔だといい、悪魔が妻子を連れ去ったので捕えたという。
ジャクソンをパトカーに入れ連行しようとするが、突然フランシスとコルトのスマホの電源が入らなくなり、パトカーも動かなくなる。
周囲には雷雲が立ち込めており、周囲にいくつもの雷が落ちる。
フランシスとコルトはジャクソンを連れ家の中に逃げるが、コルトがトラップにかかり足を負傷する。
最後に雷が落ちた場所を調べるため、フランシスはジャクソンと様子を見に行くと、そこにはジャクソンの妻マリアが現れていた。
マリアはジャクソンのせいで息子ジョナが消えたと責めており、ジャクソンが悪魔にジョナを差し出したという。
全てを話す気になったジャクソンによると、かつてジョナが高熱を出した時、ジャクソンがマリアと神に祈るとジョナに落雷が起き、マリアと共にどこかに連れ去られたという。
ジャクソンはその時現れたエイリアンを倒し、地下牢に捕えたという。
プリチャード家の歴史
その時、地下牢のエイリアンが騒ぎ始める。
ジャクソンらが様子を見に行くと、周囲から激しい物音がし、エイリアンが現れたようだった。
ジャクソンは発電機を起動し、電気柵と照明を起動しようとする。
地下牢に残ったフランシスとマリアの元にはエイリアンが現れ、フランシスが銃撃し撃退する。
ジャクソンはジョナを救うと言い、地下牢のエイリアンの指を闘犬用の拘束具で切断、その指を持って庭に埋めた魔法陣の中央に置く。
するとそこに雷が落ち、指がなくなっており、魔法陣がエイリアンのポータルであることがわかる。
フランシスはジョナのノートでその魔法陣を見ており、ジョナはエイリアンを知っていたため目を付けられたことがわかる。
ジャクソンが幼少期に父と撮った写真には、エイリアンの魔法陣が写っており、ジャクソンの父がエイリアンの手下だったことがわかる。
父はエイリアンに乗っ取られており、自らその命を絶っていた。
最後の勝者
地下牢のエイリアンを見に行ったジャクソンだったが、エイリアンに触れられすでにジャクソンの本体はなく、体を乗っ取られていたことことがわかる。
マリアは結婚直後からジャクソンは人が変わったようになっていたことを明かし、これまで流産してきた子供たちが皆人間でなかったことを明かす。
エイリアンは絶滅の危機に瀕しており、その目的は地球への移住であるという。
フランシスはエイリアンと交渉し生き残ることを決意し、コルトは玄関から入ってきたエイリアンと交戦するが、超能力で壁に磔にされ死亡する。
ジョナサンはフランシスを気絶させ、地下牢のエイリアンを庭の魔法陣に置く。
すると落雷が起きジョナが現れるが、ジョナサンがジョナを殺そうとする。しかしマリアがジョナサンを撃ち、ジョナを助けてフランシスと対峙するが、魔法陣に大きな落雷が起きエイリアンはいなくなる。
マリアはジョナを助けるためにはなんでもすると言い、母の愛に従うべきと言う。
その後現場に現れた保安官は、フランシスにジョナサンは精神を病んでおり、エイリアンに仕業などということは言うべきではないと伝える。
車に乗り込んだフランシスはジョナのノートを見返し、すでにエイリアンが地球に居着いたことを誰もに語れないことを悟る。
ジョナはマリアに収穫の時間であると言うと、ガレージの地下には大量の魔法陣があることを見せる。
レビュー・考察
ジョナサンの真実
プリチャード家の地域ではかねてより悪魔や霊の話があり、エイリアンが昔から現れていたようである。
エイリアンは地球人を乗っ取る力を持っており、ジョナサンとその父も体を乗っ取られていた。
しかしジョナサンは自分本来の心を残しており、エイリアンの子供を残す訳にはいかないと考えていた。
マリアは5回流産した末にジョナを授かっていたが、流産した子供はいずれもエイリアンの容貌をしており、ジョナサンにより封印させられていた。
人間の容貌をしていたジョナだけが育てられていたが、エイリアンのハーフであることには変わりなく、ラストではエイリアンとしての使命を果たすために動いていたことがわかる。
ジョナが書いていてた悪魔のようなジョナサンの絵は、エイリアン視点で見たジョナサンだったのだろう。
頭のおかしい父親と思われていたジョナサンは、実は人間とエイリアンの間の葛藤に悩む悲劇の父親だったのだ。
エイリアンの狙い
エイリアンの使命は絶滅に瀕した種を救うことであり、その方法は地球人を乗っ取り、地球人との間に子供をもうけることだった。
そのためにジョナサンの体を乗っ取っており、それを境にジョナサンは人が変わったようになっていた。
ジョナサンの父は、乗っ取られたことに気づいて自殺してしまった。
しかしそれでもジョナサンは本来の心を残していたので、エイリアンの子供を生かすべきでないと考えジョナを殺そうとするが、マリアに阻まれる。
結局マリアは母の愛でジョナを救うが、ジョナはエイリアンのポータルである魔法陣を大量に地下に隠していたことがわかる。
ここで映画は終わるが、ポータルを通して大量のエイリアンが地球に襲来することは想像に難くなく、地球人類は危機に瀕することになるのだろう。
白人とインディアン
この話、インディアンの話が随所に織り込まれている。
これはイギリスからやってきた白人が、インディアンとの子孫を残してアメリカ大陸の主人となったことを揶揄しているようである。
つまり、この映画のエイリアンとはアメリカ大陸を乗っ取った白人のメタファーと思われる。
次は白人がエイリアンとの子孫を残し、地球はエイリアンに乗っ取られられることになるのだろう。
エイリアン映画として
エイリアン映画としては、エイリアンの戦闘力が低くてユニーク。
よくあるエイリアンものでは異形の化け物が一方的に人類を襲うが、本作のエイリアンにそんな力はない。
なんならジョナサンとの交渉に応じてマリアを返すなど結構理知的。
そんなエイリアンが取った手段は、人類の体を乗っ取って子孫を残すことで地球を征服しようとしたという展開はユニーク。
でも結局謎の超能力でコルトを殺したように、やっぱり高い戦闘力を有していることがわかる。
ユニークな部分が全て台無しである。
それならその力で地球を征服すれば良いだけだ。
ジョナサンに捕えられたエイリアンもなぜその力を使わなかったのか疑問が残る。
コルトも死ぬ必要はなかったし、どう考えても戦闘向けの超能力は不要な展開だったと思う。
コルトは手錠をすり抜けてきたジョナサンをこともなげにいなす有能だったのに…普通の映画ならあえなく反撃を許し、情けない人物となるところだっただろう。
戦闘力の低い新しいエイリアンものの展開だっただけに、平凡なものにしてしまったたり、もったいなかった。