【アートな隠れ名作】映画「インク(ink)」が5分でわかる!【ネタバレあり】

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2009年アメリカのファンタジー映画
主演者はクリストファー・ソレン・ケリー、クイン・ハンチャー、ジェシカ・ダフィー

こんな人にオススメ!
・巧みに伏線張られた映画が好き
・愛を感じたい
・アートなセンスを感じたい

映画「インク(ink)」が5分でわかる!

あらすじ

ジョンの夢

ジョンが車の運転中事故に遭い、そこに何者かが近寄ってくる。
ジョンは娘エマと遊ぶ夢をみる。
その夢ではエマがモンスターに連れていかれると一人芝居をし、ジョンはモンスターと戦うフリをしていた。

誘拐されたエマ

夜の住宅地に光と共に語り部と呼ばれる戦士達が現れる。
語り部達は家々に入り、寝室で眠る人々に幸せな夢を見せる。
祖父母と暮らすエマの寝室にも女性の語り部アリールが訪れるが、エマにその姿は見えず遊び疲れて眠りに落ちる。

同じ住宅地にインクという悪魔たちが現れ、眠っている人々に悪夢を見せる。
エマの寝室にも黒いマントを羽織ったインクが現れ、エマの部屋にいたアリールと格闘になる。
アリールはこの戦いに敗れ、マントはエマを攫って語り部たちの追撃を振り切って逃げる。

マントはエマをどこかの街に連れて行く。
そこは実世界の裏側のようなところで街ゆく人にマントやエマの姿を見ることはできず、エマが助けを求めても誰も気がつかない。
マントはエマと緑色のマンホールに入り、その奥にいた大勢のインクに助けを求める。
インクはマントが集会に参加するためにはコードを集める必要があると言う。

ジョンの過去

実世界のジョンの元に娘エマが突然昏睡状態になり入院したという知らせが届く。
エマの祖父母は、エマには父ジョンが必要だと言うが、かつて妻を亡くし祖父母にエマの親権を奪われたジョンは、娘などいないと祖父母を追い返す。

若い頃から出世街道を走っていたジョンは家庭をないがしろにしており、妻はジョンに愛想を尽かした末に亡くなっていたのだ。

エマの行き先

ジェイとアリールら4人の語り部が裏世界のエマの病室を訪ねる。
実世界では昏睡状態のエマを祖母が看護していたが、その場にエマの両親がいないことにジェイは不満を感じる。

裏世界でマントに連れ去られたエマの元にも語り部の女性リーブが現れ、マントと格闘になる。
追い詰められたマントが自身の腕に針を打つとエマも傷つき、リーブはマントに降伏する。

マントはリーブとエマを鎖で縛って歩かせる。
マントは二人を倉庫のようなところに連れていくが、何者かがが待ち伏せしており、エマがさらわれる。
マントはエマを取り返し、エマをさらった男からインクの集会に出るためのコードを奪う。

ジョンの事故

実世界のジョンは仕事での重大トラブルを解決し、オフィスに戻るところだった。
その裏世界では語り部のジェイが連鎖反応のつなぎ目を探す作業をしていたが、その作業はアリールには理解できずいらついていた。

突如何かを掴んだジェイが持っていた蓄音機を回すと実世界で一枚のお札が飛んでいき、それはさまざまな連鎖反応を引き起こし、最終的にはジョンの車が事故にあう。
気を失ったジョンの元にアリールたちが駆け寄り、ジョンに妻と出会い幸せな結婚生活を送るまでの幸せな夢を見させる。

エマの旅路

マントは自殺によりインクになっており、その傷跡を消すため、リーブとサラをインクの集会に捧げようとしていた。
その実マントが罪悪感を感じていることをリーブは察しており、彼を覆っているマントは罪悪感の現れであるという。

マントは楽屋のようなで、そこにいた女性にコードの一部を要求する。
その女性は漂流者で、語り部にもインクにもなれず死後この世界に来たという。
女性はリーブの髪をコードの一部として要求し、リーブのことを嫌う彼女は乱暴にその髪を切る。

ジョンの入院

語り部のジェイは盲目だったが、世界の音を鼓動として感じることができ、肉体を通し実世界の人物の人生に干渉することができた。
ジェイはジョンにあえて痛い目を見させており、自分自身を知るには謙虚にならないといけないという。
もしジョンが、家庭をないがしろにし、妻を失った自分の過ちを認めることができればエマを救えるという。

ジョンが目を覚ますと、そこはエマが入院している病院だった。
病院の裏世界にはアリールら4人の語り部と大量のインクが現れる。
多勢のインクに対抗するため、語り部は増援を呼ぼうとするが救援信号は届かない。
そこでジェイが走って増援を呼びに行き、残った語り部で援軍がくるまで大勢のインクと戦うことにする。

実世界のジョンはエマを探して病院を彷徨っていたが、その裏世界では次々にジョンに迫るインクをアリールが倒していた。

変わる未来

その頃マントはエマとリーブをインクの集会に差し出していた。
インクの一人はリーブを刺し、インクに忠誠を示したマントにはもう不名誉な傷跡はもうないという。
さらにインクはエマを連れて行き、その様子を黙って見ているマントにリーブはいつになったら彼女のことを思い出す、あなたの心はそれほどまでに壊れているのかと問う。

本来の世界線でのジョンは自動車事故にあわずそのまま仕事を続け、入院していたエマを助救えなかった。
娘を守れず絶望したジョンは酒浸りになった挙句自殺し、マントのインクとなっていた。

マントはエマが自分の娘であることを思い出し、周回にいたインクたちを全て倒してエマを救う。
その光景はかつてジョンとエマが遊んでいたのと同じ光景で、ジョンが戦っていた見えない敵はインクだったのだ。

ジェイは救援を呼ぶことに成功し、裏世界の病院にやってきてた大量の語り部たちがインクを追い払う。
エマはマントをパパと呼び、ジョンはエマを抱きしめながらやがてその姿が消える。

病室で眠っていたエマは意識を取り戻し、ジョンが笑顔で迎えるのを語り部たちが見守っていた。

レビュー・考察

ちょっと難解なアート系ファンタジースリラー
二つの世界線と時間軸が入り混じるので、ここではその解説を中心にご紹介します。

世界設定

実世界の裏に死後の世界がある。
死後の世界からは実世界を見ることはできるが、ダイレクトに干渉することはできない。

死後の世界には語り部とインクの勢力がおり、対立している。
語り部は眠っている実世界の人に触れ良い夢を見させることができる。
インクは眠っている実世界の人に触れ悪夢を見させることができる。

語り部もインクも小さな太鼓のような装置を持っており、鳴らすことでワープホールを開くことができる。

ジョンの人生

ジョンはエリート証券マンだったが、出世のために家庭を顧みず妻を亡くす。
ジョンに生活能力なしと判断した裁判所は、娘エマの親権を祖父母に与えていた。

一人になったジョンは仕事を続けていたが、エマが意識不明になり入院したと知らせがくる。
知らせにきた祖父母にジョンは過去の遺恨をぶつけ、エマに会いに行こうとしない。

ジョンのビジネスもピンチを迎えており、ジョンがそれを切り抜けてエマに会いに行った時にはすでに亡くなっていた。
その後、絶望したジョンは酒浸りになり自殺してマントのインクになった。

マントのインクの目的

ここから世界線は過去の世界に入り込む。
この時点でエマはまだ元気で自室で眠っていた。

マントのインクになったジョンは生前の記憶を無くしており、自殺による傷跡を消すためエマの魂をインクに捧げようとしていた。
マントのインクはそのためにエマの寝室に忍び込み、彼女の魂をさらっていった(映画の冒頭)。
その結果エマは昏睡し、実世界のジョンに知らせがいくことになる。

ジェイの能力

両目に✖︎のテープを貼っている怪しげな語り部がジェイ。
ジェイは世界の鼓動を感じて、連鎖反応を通して実世界に干渉することができる。

いつもワン・ツー・スリー・フォーと数えているのはリズムをとっているから。
決して4以上の数を数えられないわけではない。
しかし裏世界から実世界に干渉できるのはほんの僅か、そのため狙った効果を出すには連鎖反応を利用するしかない。
ジェイはジョンをエマの病院に行かせるため、彼を入院させることにした。(エマの病室に両親がいないのを気にかけていたのが伏線になっている。)

そこでジェイはストリートの画家のそばに小型の蓄音機を仕掛ける。
子供が画家にお札を渡そうとして、蓄音機でお札が飛ばされる。
それが次々とピタゴラスイッチ的に反応し、最終的には飲み物をこぼしたドライバーが運転を誤りジョンの車が事故を起こす。

ジェイは、天狗になっていたジョンの痛い目を見させ、謙虚にさせたいと思っていた。
自分自身を知るには謙虚にならないといけない」からである。
結果、ジョンはエマの病室行くことになり、ジョンの悲惨な未来が変わる。

本来であれば、ジョンはエマの病室に行かず、手遅れになり自殺するはずだったのだから。
この事故のシーンが映画の最初につながている。

アートな作風

芸術性に優れるのも本作の特徴。
カラフルは実世界と対照的なモノクロの裏世界。
モノクロの裏世界に一点赤く染まっているところなど、所々にアートな感性を感じることができる。

インクのデザインも極めて特徴的で、なぜか全員眼鏡。
しかも顔の前に薄型モニターがあり、表情はモニターで表現する。
本性がわからないという不気味さの表現なのかも知れないが、実にユニーク。
暗闇でインクの眼鏡が浮かび上がるのは、少し滑稽ながらも結構不気味。
(実はジャケット写真がインクの群れである。)

語り部が開くワープホールのデバイスが小さな太鼓のも面白く、小気味良いポポンコポンからズガーンとワープホールが開くのはクセになる。
音楽も美しく、ただ難解な映画でなく不思議と何度も見たくなる。

エマ役の小役の子の名演が尊い。

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