【パワーで制するネット犯罪】映画「シルクロード.com-史上最大の闇サイト」が5分でわかる!【ネタバレあり】

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2021年のアメリカ映画
主演者はジェイソン・クラーク、ニック・ロビンソン
デジタル音痴な刑事と天才ネット犯罪者のチェイスを描いたスリラー

こんな人にオススメ!
・力こそパワー
・天才の人物像に触れたい
・嫌な上司に一泡吹かせたい

映画「シルクロード.com-史上最大の闇サイト」が5分でわかる!

あらすじ

2010年シルクロード設立

2010年アメリカ、精神病棟を退院したリックは自宅に戻るが、そこで妻から愛する一人娘が学習障害であると伝えられる。
リックは刑事だったが心を病んで捜査に失敗しており、退院を機に現場復帰を求めたが受け入れられなかった。
リックはサイバー犯罪課に異動になるが、古風なリックはマウスの使い方から覚えなければならなかった。

その頃、世界を変えたいと願う若者ロスは、匿名で売買できるサイトの設立を目指していた。
ダークウェブでの暗号化取引で決済にはビットコインを使うことで、足のつかないネット取引をすることを思いつき、わずか3ヶ月で麻薬を買うベータテストを成功させる。
ロスはこのサイトをシルクロードとして公開し、麻薬取引を誰でもできるようにする。

この頃リックはネットでの麻薬売買の噂を聞きつけており、友人の情報屋レイフォードからシルクロードの情報を得ていた。
レイフォードが試しに注文した麻薬が手元に届いたことを確認したリックは上司に報告しようとするが相手にされない。

ロスはサイトを拡大するため恋人ジェシカの伝手で、レポーターにシルクロードの情報を与える。
それによりシルクロードは急激に拡大、誰もが気軽に違法薬物を手にできるようになった。

リックは以前レイフォードが購入した麻薬の郵便物から、麻薬の差出人クロニックペインの居場所を突き止めようとしており、捜査のためにシルクロードのアカウントを作ることにする。

2012年シルクロードの捜査が始まる

2012年、米国政府もシルクロードの摘発に本腰を入れており、リックもFBIターベル率いる捜査チームに派遣されることになる。
しかし昔ながらの捜査方法で犯人を特定しようとするリックに対するターベルは否定的で、会議の場でリックを小馬鹿にしていた。

リックは匿名郵便物の出本を探るため、ジオフェンスと手法で網を張っているとクロニックペインが網にかかる。
その捜査のための麻薬購入を自費で行っていたためリックは妻に不信感を抱かれるが、なんとかクロニックペインの居場所を突き止め逮捕することに成功する。

この頃、ドレッドパイレーツロバート(DPR)と名乗るようになっていたロスだったが、クロニックペインからの連絡が途絶えたことに焦りを覚えていた。
クロニックペインを自宅に連れて行き尋問していたリックはそこでDPRという名を聞き出し、DPRの口座の金を引き出させる。

さらにリックはかねてよりロスとチャットをしていたため、ロスからクロニックペインの拷問を依頼される。
リックがクロニックペインがロスを売ったとチャットで伝えると、ロスはクロニックペインを殺すようリックに依頼したため、リックはクロニックペインの死を偽装する。

この頃、ロスはシルクロードの運営にのめり込むあまり、長年の恋人ジュリアとうまくいかなくなり、新たな恋人と暮らしていた。
リックも学習障害の娘を特別な学校に入るための奨学金を得るのに必要な面接を仕事にかまけてすっぽかしてしまったため妻に憎まれることになる。

2013年シルクロード閉鎖

そして2013年、FBIの捜査チームはロスのIPアドレスを突き止めることに成功する。
ロスの発注した偽造パスポートから足がつき、ロスの自宅に捜査員が送り込まれることになるが、その情報を得たリックは独自にロスを訪ね、捜査の情報を教えて恩を着せ、自身とのチャットの履歴を削除するように言う。

さらにリックは新たなアカウントを作って他人になりすまし、FBIの捜査チームが突き止めたIPアドレスを使ってロスを脅し、50万ドルのビットコインを要求する。
これに対しロスはリックに相談し、リックは海外にいる知人を紹介するが、その知人もまたリックのなりすましだった。
ロスがリックがなりすました人物に脅してきた相手の殺人を依頼してきたため、リックは殺人依頼の証拠を押さえ、さらに依頼料としてロスから大金をせしめることに成功する。

それぞれの罪

FBIの捜査チームはリックの身の回りに迫っていたが、逮捕まであと一歩のところでリックはロスに電話をする。
電話を切ったロスがシルクロードにログインしたその直後、FBIの捜査チームはいっせいに飛び出し、ロスを拘束する。

同時にリックも数々の捜査妨害の件で逮捕されるが、リックはこのときすでにロスからせしめた大金を妻に密かに渡していた。

刑務所に入ったリックの元に妻と娘が会いにきて、リックは娘の特別な学校への入学を祝うとともに、正しいことをするように伝える。
同じく刑務所に収監されたロスは裁判で晩年のわずかな時間は残して欲しいと願うも虚しく、2015年に麻薬密売で終身刑が確定するも、殺人依頼については言及されなかった。
そしてリックには恐喝や司法妨害で懲役6年半の実刑が言い渡されるのだった。

レビュー・考察

映画冒頭でわざわざフィクションであることを謳っているが、シルクロードと闇サイトが摘発されたことは紛れもない実話である。
この逮捕劇の部分が実話に着想を得たフィクションなのだろう。

リックとロス

リックとロスの人物像の掘り下げがよくできており、その対比がこの映画の見どころ。
リックは定年間際の古風な刑事で、麻薬捜査での失敗が原因で、サイバー捜査課に左遷された。

リックはクリックすらできないほどのパソコン下手。
年下の上司シールズは嫌味でリックを明らかに煙たがっていた。
しかしリックはパソコンの勉強をするとともに、昔ながらの地道な現場捜査でシルクロードの幹部クロニックペインを逮捕する。

しかしここでリックはクロニックペインを警察署に連れて行かず、なんと自宅に収監し自分で尋問をし始める。

リックはシルクロードにユーザーとして潜入し、ロスとチャットしていたため、ロスからクロニックペインの殺人指示の証拠を得ることに成功する。
しかしシールズらリックの持ってきたロスの殺人教唆の証拠を全く相手にしなかった。
同じような失態をFBI捜査チームのリーダーターベルも犯しており、おかげでロスは殺人依頼については罪を問われなかった。シールズもターベルもパソコンばかり見て、その先にいる人を見ていないという描かれ方をしている。

リックの自由

リックは体を張った捜査でFBIより先にロスの居場所を突き止めていた。
しかしその代償は大きく、捜査のために麻薬の購入を自腹で行っていたため妻にひどく睨まれていた。
リックの一人娘は学習障害で、妻は娘を特別な学校に入れようとしていたが、その資金は不足していた。
頼みの綱の奨学金もリックが面接をすっぽかしたためダメになり、妻の怒りは頂点に達していた。

仕事にかまけてプライベートを犠牲にしてしまう点はロスも同じで、シルクロードの運営にのめり込むあまり恋人ジュリアと別れることになった。

しかし逞しいことにリックはロスをペテンにかけ大金をせしめており、その大金をなんと着服する。
FBI捜査チームのリーダーターベルや上司のシールズに報告することもできたのだろうが、ターベルもシールズもリックの捜査報告をことごとく無視しており、リックも無駄であると判断したのだろう。
最終的にリックはその大金を娘の入学金にあて、自身は逮捕され懲役6年の刑に処せられることになる。

破天荒で行き過ぎた捜査と動機はどうあり大金を着服するたり、ジャンプ漫画の某警察官を彷彿とさせる。
パソコンはわからないが、ネット犯罪を圧倒的パワーによる法に縛られない捜査で解決してしまうあたり、紛れもない剛腕である。
ネット上での捜査にこだわるシールズやターベルとの対比になっており、リックを嫌っていたシールズも最後にはリックを頼ることになるが、これをリックが自分嫌な奴ですからwと断るのが痛快。
どうでもいいが、シールズは捜査17件を抱えていると言っていたが、単に自身の解決力が不足しており、仕事が溜まっているだけのでは…

ロスの自由

ロスがシルクロードを開設した動機は自由。
ロスの父は厳格な人物で、堅実な道をロスに進めていたように古風な人物だった。
ロスが自由を求めてイリーガルな道を選んだのは、この父への無意識の反発だったのではないだろうか。

ロスはシルクロードで人々に自由を与えたが、麻薬で人生を踏み外す人々がいるのを目にするようになる。
ロスは自由を扱える人物だった、多くの人は制限ない自由を扱いきれずに破滅し、ラストでロスは自由を与えると人間は暴走すると悟っていた。
この述懐は、シルクロードを無闇に拡張し失敗したロス自身もまた、自由により暴走してしまった人間であったという自嘲なのかもしれない。
だから法律で人間を縛っているんだね、と言うのがよくわかる事例である。

強い人間であるが故に弱い人間を理解しきれなかったロスだが、天才というのに相応しい才能の持ち主だった。
ロスはその才能に、目的のためにはイリーガルな手段も問わない倫理観がセットになってしまったため不幸な結末を迎えることになったが、目的のために手段を問わない点は実はリックも同じである。
なので刑期は違えど、刑務所で再会することになった。

電話の意味

ラストでロスがFBIに捕まる直前、リックはロスに電話してこういった。
「50歳になって思い描いた人生と違うと思ったら思い出せ「最初に見つけたのは俺だ。」」

これはロスが逮捕されることを暗示しており、これから過ごす刑務所の中でこんなはずではなかった。
と思ったら、自分が世界で最初にシルクロードという抜け穴を見つけた人物であることを思い出し自信を持てと言いたかったのではないだろうか。

リックもロスとシルクロードでチャットをするうちに、友情のような感情が芽生えていたのかもしれない。
リックがロスに捜査員が来ることを教えたのも、チャット履歴を削除させるためだけではなかったのではないだろうか。

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