映画「MEN  同じ顔の男たち」が5分でわかる!【ネタバレあり】

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2022年のアメリカ・イギリス映画
主演はジェシー・バックリー、ロリー・キニア
傷心の女性が田舎で恐怖を味わうドラマ・ホラー

映画「MEN  同じ顔の男たち」が5分でわかる!【ネタバレあり】

あらすじ

ハーパーの傷心旅行

夫のジェームスを亡くしたハーパーは、2週間田舎の屋敷を借り、一人で過ごすことにする。

着いた屋敷で何気なく庭にあったリンゴを齧っていると、ジェフリーという中年の大家がハーパーを迎えてくれる。
ジェフリーは愛想良く屋敷を案内すると、ハーパーに夫のことを軽く尋ね帰っていった。
荷物を整理しながらハーパーは夫ジェームスと酷い喧嘩したことを思い出していた。

気分転換にハーパーは屋敷の周囲を散策することにする。
屋敷の周囲は森になっており、その先にトンネルがあるのを見つける。
ハーパーは慎重にトンネルに入り、半ばに差し掛かった頃、出口の光の向こうに人影があるのに気がつく。
人影が走って向かってきたためハーパーは慌てて屋敷に戻ろうとするが森で道に迷う。
屋敷を探して森を彷徨い森の中には数軒の廃屋と広大な草原があるのを見つける。
草原で写真を撮ろうとしたハーパーは、裸の男性が草原の端に立っているのに気がついて逃げる。

無事屋敷に戻ったハーパーは、友人とビデオ通話をしていたが、あの裸の男が屋敷を外から覗いているのに気がつく。
ハーパーはすぐに警察に電話をするが、玄関のドアの新聞受けから男の手が伸びてくる。
裸の男は駆けつけた警察に逮捕されたが、警察はこの男が無抵抗で逮捕されたことから無害な変わり者と判断していた。

男たち

屋敷の近くの教会を訪ねたハーパーは夫と喧嘩し殴られたことに激怒し、夫を家から追い出したことを思い出していた。
教会の外にはお面をかぶった少年がおり、ハーパーにかくれんぼをしないかと話しかけてくる。
ハーパーが対応に困っていると司祭が現れお面の少年を嗜めると、少年は司祭に暴言を吐いて去っていった。

司祭はハーパーが教会で苦悩しているのを見ており、ハーパーの話を聞くことにする。
ハーパーの夫はハーパーに家を追い出された後、2階から落下し命を落としていた。
2階から家入ろうとして滑ったのか、自ら身を投げたのかもうわからないが、夫が落下する様子を目の前で見ていたハーパーはそのことに苛まれていた。
司祭はハーパーが罪の意識に苛まれていると言い、その上で、夫がハーパーを殴った後謝罪の機会を与えたのかと尋ねる。
司祭は謝る機会を設けていたなら夫は死ななかったかもしれないと伝えるが、これにハーパーは怒りその場を立ち去ってしまう。

その足でハーパーは以前ジェフリーに聞いていたバーを尋ねる。
そこにはジェフリーがいたが、先日裸の男を捕まえた警官も現われ、裸の男を1時間前に釈放したという。
ハーパーは訝しがるが、裸の男にはこれといった罪状がなく、ハーパーが主張するストーキングについても男にその意思があったか不明確だった。

夜も更け屋敷に戻ったハーパーは友人にビデオ通話をし、この日あったことについて話す。
しかしその内容は少年がクソ女と罵ったとか、司祭に夫はハーパーのせいで自殺したと言われたなど、認知の歪んだ内容だった。
その様子に何かを悟った友人は、明るくハーパーを励ましすぐに屋敷に向かうと言うが、屋敷の場所を伝えている途中で落雷により電波が乱れ通話が落ちてしまう。

恐怖の夜

ハーパーが窓の外を見ると警官の姿が見えたので、外に出るが警官は話しかけても何も答えない。
庭の灯りが一周消えた間に警官の姿は消え、不審な男が全力疾走でハーパーに向かってくる。

ハーパーは慌てて屋敷に戻りキッチンに隠れていたが、キッチンのガラス窓が突然割れ、玄関のドアが激しく叩かれる。
しかし屋敷に入ってきたのは騒ぎを聞きつけて駆けつけたジェフリーで、ジェフリーはキッチンのガラス窓を突き破って重傷を負ったカラスを見つける。
不審者の存在を訴えるハーパーのため、ジェフリーは不審者がいないか周囲を見回るが、不審者の姿は見当たらなかった。

しかしその直後、庭に出ていたハーパーの目の前に突然裸の男が現れハーパーにたんぽぽの綿毛を吹きかける。
ハーパーは朦朧とした様子で屋敷の中に戻るが、何者かが玄関の新聞受けから手を伸ばし、ハーパーの手首を掴む。
ハーパーはその腕に包丁を突き刺し、男は包丁の刺さった腕を強引に引き抜いたため、腕から先が裂けてしまう。

気がつくと屋敷内にはお面の少年がおり、その手は腕から先が二つに裂けていた。
ハーパーは少年に包丁を突きつけるが、少年は恐る様子もなくハーパーとかくれんぼをしようと言う。
その時突然屋敷に見知らぬ男が入ってきたため、逃げたハーパーはバスルームに追い詰められる。

しばらくしてバスルームの扉が開くと入ってきたのは司祭だったが、その手は腕から先が二つに裂けていた。
司祭は唐突にハーパーが肉欲に熟達しているといい始め、ハーパーの下腹部に触れてきたため、ハーパーは司祭の顔に包丁を突きつける。
司祭はハーパーの首に腕を回し鏡台に押し倒してきたため、ハーパーは司祭の腹部を刺して倒す。

誕生

ハーパーは車で屋敷から逃げ去ろうとするが、道中で誤ってジェフリーを轢いてしまう。
ジェフリーは大怪我を負いつつも、運転席からハーパーを引き摺り出し、車を奪って走り去る。

星空の綺麗な深夜の道路に一人投げ出されたハーパーだったが、そこにジェフリーが猛スピードで車を飛ばして帰ってくる。
ジェフリーはハーパーを轢こうと狙っていたが失敗し、車は壁にぶつかり大破する。

大破した車の跡から裸の男が現れ突然お面の少年を産み落とす。
少年が叫びを上げると、今度はそのお腹から司祭が生まれてくるが、ハーパーはその様子を見届けず屋敷に戻る。
その後を這いずりながら追いかけてきた司祭は、その背中からジェフリーを産み出す。
その様子を一瞥したハーパーは落ち着いた様子で暖炉にあった斧を持ち出していたが、その時ジェフリーの口からは夫ジェームスが産まれていた。

ソファに腰掛けたジェームスの隣にハーパーは腰掛ける。
ジェームスは死んだ時、鉄柵に刺さったため腕から先が裂け、足先が砕け内臓が潰れたといい、それはハーパーがやったことだと言う。
ハーパーがジェームスに何を求めるのか問うと、ジェームスは愛だと答える。

夜が明けビデオ通話をしていた友人が屋敷に着くと、庭先には大破した車があり、ハーパーが庭で一人静かに微笑んでいた。

レビュー・考察

美しい自然描写の冒頭

前半はサスペンスっぽい内容ながら、芸術性あるれる自然描写に魅せられる。
特に冒頭のトンネルのシーンは、真っ暗なトンネル内と緑の森の景色の対比が美しく描かれている。

このシーンでハーパーがトンネル内で聞いた「ハーパーハーパー」というトンネル内のこだまがこの後何度もBGMとして流れるのがまた印象的。

被害者意識の塊、ハーパー

バーから帰ってきたハーパーは、周囲への怒りを友人にぶちまけるが、よく見るとこれが結構なお門違いなことがわかる。
教会で出会った少年は、ハーパーにクソ女とは言っていない。
司祭はなぜ夫に謝る機会を与えなかったのか?と問いかけただけで、何もハーパが夫を殺したとも言っていない。
警官が裸の男を釈放したのは罪状がなかったからで、ハーパーはストーキングされたと主張していたが、裸の男がハーパーに興味を持っていた描写はない。
事実だけを描写すると警官の言う通り屋敷に迷い込んでリンゴを食べただけ(全裸は公然猥褻じゃないのか?という疑問はあるが…)。

あらゆる面で被害者面するのがこのハーパーという女性であり、実はそのことは冒頭の夫ジェームスとの口論のシーンでも指摘されている。

これらから推察するに、ジェームスの死の原因はやはりハーパーにあるのではないのだろうか?
ハーパーとジェームスの口論のシーンはいつもハーパー目線から語られている。

この被害者フィルターを通した話なので信憑性が低く、口論の原因はハーパーにあった可能性ある。
ハーパーもそれを薄々感じているが決して認めたくないので、わざわざ自分を知る人のいないど田舎に来て、知らない人に相談し無条件に肯定してもらいたいと思っている。
だから教会のシーンでは肯定してもらえると思った司祭に図星をつかれて激怒してしまったのではないだろうか。
そして訪れたバーでは警官が裸の男を釈放した聞き激怒、ここでもハーパーのストーカーのあったという被害者主張は受け入れてもらえなかった。

結局ハーパーは全てを肯定してくれる友人とまたビデオ通話するが、この友人もこういうパーハーの性質を心得ているのか、突然の電話にまたなんかヒスってるという空気を漂わせる対応をとっているように見える。

謎な展開が続く後半の考察

映画の後半は現実か妄想かわからない展開が続く。

屋敷に突っ込んできたカラスはおそらく教会にいた少年のいたずら。
後のシーンで少年が持っていたカラスはおもちゃだった。
少年はハーパーに構ってほしくてドアの新聞受けから手を伸ばしていたら、被害妄想を爆発させていたハーパーに腕を刺されたものと思われる。

ジェフリーがカラスを絞め落とすフリをしたのは、いたずらだとバレないようにするため、ハーパーにその様子を見ないように言った。
ジェフリーは度々ヒスを起こすハーパーに呆れており、不審者がいると騒いだハーパーに合わせて屋敷の外を見回った。
不審者をこれみよがしに探す様はわざとらしく、ハーパーを小馬鹿にしているようにも見える。
この時点でジェフリーのハーパーへのストレスは限界に近くなっており、ハーパーに車で轢かれたことで限界を迎える。
ハーパーを車から引き摺り出し、車を奪ってハーパーを轢こうとして事故る。

この前に司祭はハーパーに性的な関係を迫り、返り討ちにあっている。

終盤でジェフリーが事故った車から出てきたのはあの裸の男で、その体から男たちがかわるがわる生み出される光景はちょっとグロテスク。
男たちの共通点はハーパーが死に関わっていることで、少年➡︎司祭➡︎ジェフリー➡︎ジェームスの順で出現する。

全ての男性の腕の先が裂けており、その裂け方はジェームスが転落死した時の鮭方と同じ。
これはハーパーの罪の意識を現していると思われ、次第に何も感じなくなっているハーパーの表情は、自身の罪を受け入れた諦めを感じさせる。

ラストに出てきたジェームスはハーパーの愛を求めていた。
ハーパーはジェームスと結婚していたが、ジェームスのことを愛していなかったようだ。
日本でもよくある話。

ラストで見せたハーパーの笑みは自嘲ではなかろうか。

女性から見た男性像を描きたかった?

ハーパーは屋敷に来た時、庭のリンゴを齧っている。
ジェフリーが禁断の果実と冗談で言っていたが、実際アダムとイブが口にした禁断の果実のメタファーなのだろう。
次いで裸の男が庭のリンゴを齧るのは、アダムを示唆している。
裸の男がハーパーにたんぽぽの綿毛を吹きかけるシーンがあるが、これは受精のメタファーであると思われる。

アダムとイブは知恵の身を齧ったことで、男女を意識するようになった。
この映画は男と女は別の生き物で、ものの捉え方が全く違うということを言いたかったのではないだろうか。

とにかく後半になるほど抽象的で、何がいいたいのかよくわからない映画。

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