2018年のアメリカ映画
出演者はナタリー・ポートマン、ジェニファー・ジェイソン・リー、ジーナ・ロドリゲス
女性科学者たちが超常現象の調査に挑むSF映画
こんな人にオススメ!
・人類は地球の癌
・奇怪な現象が見たい
・鬱くしい風景が好き
映画「アナイアレイション -全滅領域-」が5分でわかる!
あらすじ
・帰ってきた夫
大学で細胞生物学を教えるレナの夫のケインは、1年前軍の任務で出て行ったきり姿を消していた。
ケインはある日突然レナの元に帰ってくるが、1年間の記憶全てを失っていた。
ケインが血を吐いたためレナは救急車を呼ぶが、ケインは多臓器不全で意識不明となる。
さらに搬送中の救急車は軍隊に包囲され、レナはケインとエリアXにある施設に連れて行かれる。
エリアXでレナが目にしたのはプリズム状の光が降り注ぐ超自然現象シマーで、責任者のヴェントレスによると三年前に始まったそれは境界を広げて続けていると言う。
施設で女性科学者たちと出会ったレナは、彼女らが6日後にシマーの調査に行くことを聞く。
前回シマーを調査した軍人たちは1人しか帰って来ず、その唯一の生き残りがケインだった。
・奇怪な生物
レナは調査隊に志願し、ヴェントレスを隊長とする女性5人のチームに入る。
シマーの中はジャングルになっており、そこで一夜を明かした彼女らには前日の記憶がなくなっていた。
それだけでなく、食糧の減り具合から4日はすでに経過していることがわかった。
シマーの中で見つけた小屋を調査していると、隊員のラデックが突然沼に引き込まれる。
なんとか助け出すが、沼から巨大なクロコダイルが現れ、元軍人のレナがライフルで応戦する。
倒したクロコダイルを調べると、サメのような歯が生える異種混合の変異が起こっていた。
一行は廃墟と化した基地を見つけ、その中の掲示物にはケインの名が残っていた。
前回の調査隊が残したメモリーカードを再生すると、腹を裂かれた隊員の体内に蠢く何かがいる映像が残されていた。
夜になり、夜警をしていたレナは巨大なクマに隊員のシェパードが襲われ死亡するのを見る。
翌朝隊員たちは口々に帰還を進言するが、隊長のヴェントレスだけはまだ何も分かっていないと調査を継続する。
レナは帰還に賛成しつつも、前に進んだ方が引き返すより安全だと訴え、シマーの発生源である灯台を目指すことになる。
海岸線まであと2時間のポイントにある廃村についた一行は、そこで植物が人型に育っているのを見つける。
実はシマーは全てを反射するプリズムで、人の遺伝子すら反射していることがわかる。
その夜、眠っていたレナは隊員のアニャに銃を突きつけらる。
拘束されたレナは、シェパードがクマに襲われ死亡した件はレナの狂言ではないかと問い詰められる。
しかしアニャはシェパードの声が聞こえると部屋を出て行き、入れ替わりにシェパードを殺したクマが家に入ってくる。
クマはシェパードの声で助けてと叫び続けており、戻ってきたアニャがクマに発砲するが、逆上したクマに食い殺される。
同じくアニャに捕まっていた隊員のラデックがクマを撃ち殺し、レナたちはことなきを得る。
・自己との遭遇
隊長のヴェントレスは体も心もおかしくなっていることに焦りを覚えており、1人廃村を出て先に行ってしまう。
取り残されたレナとラデックだったが、ふらりとも庭に歩いていったラデックは植物に呑まれるように結局戻ってこなかった。
1人で灯台に向かったレナは灯台周辺で大量の白骨死体を見る。
灯台の中に残されたビデオカメラにはケインが映っており、撮影者にレナを探せと言い残し、この灯台で自殺していたことがわかる。
その先にはヴェントレスがいたが、彼女の体の中で何かが膨張しており、やがて大量の光を吐いて死亡する。
ヴェントレスが吐き出した光は一塊のなり、光に飲み込まれたレナの血液はあっといまに分裂を続け真っ黒な姿の人間になった。
銃は効かず、逃げた先にもいた黒い人をレナは殴ろうとして逆にレナは殴られる。
黒い人とレナと全く同じ行動をとっており、それを利用したレナが手榴弾を渡すとレナの姿そのものになった。
手榴弾の爆発直前でレナは灯台から脱出し、黒い人は炎に包まれて灯台も燃え落ちる。
シマーの光も消えてなくなり、生き残ったレナは研究所で事情を聞かれる。
レナは超常現象に地球を侵略する目的はなく、全てを変異させていたという。
シマーがなくなり目を覚ましたケインにあったレナは、目の前にいるのがケインではないことがわかっていた。
ケインとレナは抱き会うが、その目に人間の生気はすでになかった。
レビュー・考察
ある日突然灯台を光が包み込む。
その光の中に入った調査隊は1人も帰って来ず、唯一レナの夫ケインだけが1年後に帰ってきたが、すぐに危篤状態になる。
レナは夫ケインが任務で留守がちの寂しさから大学の同僚と浮気をしていた。
それを知ったケインは危険なシマーへの任務に急遽参加し、たどり着いた灯台で自殺する。
ラストで現れたケインの正体は宇宙人(?)黒い人で、ケインを模倣している。
レナも灯台で黒い人に出会ったが、彼女はそれを倒して逃げることに成功する。
しかしその目にはすでに人間の光が宿っていなかった。
ケインを本物でないと知りつつ抱き合ったあたり、もうレナも正気ではなくシマーに支配されている。
劇中で一つの細胞が二つになり、増殖を経て生物を形作っている。
細胞分裂には限りがあるがあるが、その限界を越えれば不死になると語られている。
おそらくラストでレナとケインはすでに不死の存在となっており、レナの腕に現れた∞の模様はそれを物語っている。
これから不死となった新人類の増殖が始まっていくことを感じさせたところで終劇。
ではなぜ、人類はこの謎の存在にとって変わられないといけないのか?
劇中では自殺とは違う、誰もが持っている自己破壊について言及されている。
破壊するのは肉体に限らず、仕事のキャリアや夫婦関係など様々だが、理性的な行動でなく衝動であることが特徴。
この調査隊はリストカットの常習者や麻薬中毒者など、自己破壊を繰り返していた人たちで構成されていた。
レナもケインに借りがあると調査隊に志願していたが、彼女の不倫も含めこの行動も一種の自己破壊と言える。
「生き残る価値があるのは、生きる意思を持ったものだけよ」「生きる意思を放棄して、見せかけの希望に縋った」
とは旧劇エヴァンゲリオンで自身の死を願った人類の敵に人間が向けた台詞。
このメッセージと同じテーマを本作のガーランド監督もこの映画に込めたものと思われる。
違うのこの言葉を向けられるのが、地球人類に対してということ。
自傷や麻薬、不倫に走る人類に代わり、新たな存在が人類の地位にとって変わるべきだと。
さらに言えば本作では冒頭から癌細胞が正常な細胞と増え続ける様子が描かれる。
シマーの中ではいろんな遺伝子が混じり合った生物が出てくる。
サメの歯を持ったワニとか人間の意識を取り込んだクマとか、正常な体で異常な細胞が混じるというのがどういうことか、わかりやすく教えてくれている。
異常な細胞が増え続ければその体は当然滅んでしまう。そしてそれは人類全体に言える。
自身の破壊を望む異常な人間が増えれば、人類としては滅びの道を歩むしかない。
そんな人類への絶望を感じるこのできる滅亡系SFサスペンス。
シマー調査になんでジープとか使わんのか?とか、
シマーの人体への影響を調べてから灯台を目指そうよとか、
そもそも灯台爆撃してればよかったんじゃ?とか、
なんで素人見たいのが人類の命運をかけた調査隊に選べれているのか?とか、
疑問とツッコミどころが無限に湧いてくるが、本題はそこではない。
シマーの鬱くしい光と奇怪な現象のコントラストで人類に絶望しよう!