【物理学者、ホラーに挑む】映画「ノウイング/Knowing」が5分でわかる!【ネタバレあり】

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2009年のアメリカ映画
主演者はニコラス・ケイジ、ローズ・バーン
50年前の手紙に書かれた預言に挑むSF映画

こんな人オススメ!
・未来を知りたい
・運命はあると思う
・ディザスター映画が好き

映画「ノウイング/Knowing」が5分でわかる!

あらすじ

50年後の君へ

1959年、ウイリアムドーズ小学校の創立記念日に、子供たちが描いた未来の絵をタイムカプセル入れ埋めることになる。
このアイデアを出したのはルシンダという少女だったが、彼女が書いた絵は意味のわからない数字の羅列で、時間内に書ききれなかったので教諭のテイラーに取り上げられてしまう。

創立記念日の式典の後、ルシンダが突然姿を消したため、タイラーがその姿を探すと、ルシンダは倉庫の中で扉を内側から引っ掻いていた。
ルシンダは囁く声を止めてと言っており、引っ掻いていた扉には何かの数字が書かれていた。

50年後、MITで宇宙物理学を研究するジョンは、妻を事故で亡くし、息子のケイレブと二人で暮らしていた。
その日はケイレブの通うウイリアムドーズ小学校の創立記念日で50年前に埋められたタイムカプセルを開ける式典が行われた。
タイムカプセルに入っていた絵は、今を生きる生徒たちに配られ、ケイレブもその1枚を手にする。

しかしケイレブが手にした絵には、子供っぽい未来の絵は書かれておらず、謎の数字の羅列が紙いっぱいに書かれており、封筒にはルシンダという名前が書かれていた。
ケイレブがその手紙を眺めていると、遠くから何者かがケイレブを見ているようだったが、一瞬目を離した隙に姿を消していた。

第一の預言

その夜、ジョンはケイレブがタイムカプセルから持ち帰ってきた手紙に書かれた数字を軽い気持ちで解析してた。
するとその数字の羅列の一部は、2001年のアメリカ同時多発テロの起こった日と死亡者数がずばり書いてあった。
この手紙は、この50年に起こった多数の大惨事の発生日と死亡者数を完全に当てていた。

その内容にはジョンの妻が亡くなった事件や未来の事件も含まれていたため、同僚で友人の教授フィルに相談する。
フィルは意味のない数字があることを指摘し、数字の羅列からジョンが勝手に意味を見出しているに過ぎないと言う。

ジョンはカプセルを埋めるのに立ち会ったテイラーという当時の教諭を訪ね、手紙を書いたルシンダのことを聞く。
ジョンはルシンダに会いたいと話すが、数年前に亡くなったという。

次の日、ジョンはケイレブを迎えに行くため、嵐の中車を走らせていたが、その途中でルシンダの手紙に書かれた数字の一部は、場所の座標を意味していたことがわかる。
手紙に現在の日時と場所が書かれていたので、教授が車を降りて様子を見に行くとジャンボジェットがその場に墜落し、大勢の乗客が犠牲になった。
この事件で81名が亡くなっており、ルシンダの手紙に書かれていた死者数と完全に一致していた。

第二の預言

ジョンが事故現場にいたことを聞きつけたフィルは、数字の羅列と事件に関係はないという。
しかし、ジョンはまだ2つ大惨事が起こるといい、それは防げないと直感していた。

深夜、目を覚ましたケイレブの元に見知らぬ男が現れ、家の付近が一面の火に包まれる光景を見せる。
恐怖に泣き出したケイレブをジョンが抱き抱え、ジョンは窓の外に見知らぬ男が見ているのに気がつき、その後を追うが捕まえる事は出来なかった。

翌日、ジョンはかつてルシンダの住んでいた家を見つけ、そこに住んでいる母ダイアナとその娘アビーの後を追う。
ジョンは博物館でダイアナに話しかけ、ダイアナの母であるルシンダのことを訪ねる。
しかし未来予知の話になった途端、ダイアナは態度を一変させ、アビーとその場を立ち去ってしまう。

これから起こる大惨事を防ぐため、ジョンはケイレブを妹グレースに預け、一人手紙に書かれていた座標に向かう。
ジョンは地下鉄のホームで怪しげな男を見かけそのあとを追い、地下鉄の車両の中で捕まえるが、その男はただの万引き犯だった。
ジョンを乗せた地下鉄は予定通り走り出すが、駅を離れてすぐに脱線事故を起こす。
車両は次の駅のホームに乗り上げ、乗客等大勢が犠牲になる。

最後の預言

かろうじて生き延びたジョンがケイレブと家に戻ると、家の前でダイアナとアビーが待っていた。
ダイアナはルシンダは10月19日にダイアナが死ぬと予言しており、ダイアナはそのことを気味悪がっていた。

ルシンダの手紙をダイアナに見せると、最後の2文字が「33」ではなく、逆さまに書いた「EE」であることがわかる。
ルシンダはダイアナが9歳の時に自殺で亡くなっており、よく囁く声に悩まされていたという。

ジョンはダイアナとルシンダが亡くなった場所を訪ね、そこで見つけた黒い石を拾おうとした時、ベッドの裏に何かが書いてるのを見つける。
ベッドの裏にはEVERYONE ELSEとひたすら書かれており、EEがEVERYONE ELSEの意味であることがわかる。

その時、車に残してきたケイレブとアビーの元に数人の男が迫ってくる。
ケイレブがクラクションを鳴らしたためジョンは車に戻り、その場から逃げた怪しげな男の後を追うが、追い詰めた男は口から強い光を放ち忽然と姿を消す。
ジョンはEEの後に数字がないのは、大惨事が複数箇所で起こるからだと考える。

太陽と地球

ある時、ジョンはアビーがルシンダがよく見ていたエゼキエル書の絵を書いているのに気がつく。
アビーはそれを太陽だと言っており、何かに勘づいたジョンは、フィルが務める気象研究所を訪ねる。

ジョンは自身が研究していたスーパーフレアのことをフィルに話し、太陽のスーパーフレアで地球上の生物は死に絶えるという。
その話を聞いたダイアナはショックを受け、子供の頃遊んだ洞穴に避難するという。

ジョンは大事にしまっていたプレゼントボックスを開け、妻の写真の入ったペンダントを眺める。
ジョンは不仲の父に電話し、なるべく早く地下に隠れるように言うが、父は死の運命を受け入れ、どこにも避難しないという。

ジョンはルシンダが手紙に書けなかった最後の数字を突き止めるため、50年前ルシンダが閉じこもっていた部屋のドアの塗装を剥がす。
ジョンは最後の数字を突き止めるが、ダイアナは洞穴に逃げるためアビーとケイレブを連れて行ってしまう。

ダイアナは立ち寄ったガソリンスタンドで、緊急警報が発令され、太陽フレアが来るので地下に避難するよう政府が指示しているのを見る。
ケイレブは公衆電話でジョンに電話をかけ、電話を代わったダイアナは洞穴に先に行くというが、ジョンは放射線は地下に届くのでどこにいても助からないと返す。
ジョンはルシンダの残した場所に行くしかないというが、ダイアナが公衆電話で話している間に、車は謎の男に奪われ、車にいたケイレブとアビーが攫われてしまう。
ダイアナはその場に乗り捨てられた車で追いかけるが、大事故を起こし、命を落とす。

ダイアナの事故現場に追いついたジョンだったが、すでにダイアナは亡くなった後で、ダイアナが握り締めていた黒い石を見つけると、どこかに車を走らせる。

親子の別れ

ルシンダの残した座標に従いたどり着いたところは人里離れたところで、付近には黒い石が一面に落ちていた。
ジョンはその場にいた男に銃を突きつきつけ、ケイレブの居場所を問いだだすが、その場に現れたケイレブがそれを止める。
その時頭上から巨大な宇宙船が現れ、ケイレブとアビーが人類の再スタートに選ばれたという。

ジョンはケイレブとの別れを悲しむが、宇宙人は聞こえた者しか連れて行けないという。
ケイレブはずっと一緒だと約束したと泣きじゃくるが、ジョンはそれを宥めて妻と自身の写真が入ったペンダントを渡す。
ケイレブはジョンを背にして宇宙船に乗り込み、ジョンにずっと一緒だと手話で言葉を交わす。

ケイレブとアビーを乗せた宇宙船は宇宙に飛び立ち、ジョンは一人その場に残される。
この世の終わりが迫る中、ジョンが街に戻ると人々が大混乱を起こしており、群衆の中にはフィルもいた。
ジョンはグレースと実家に戻り、不仲だった父と抱擁をかわす。
その時、大規模な太陽光フレアが発生し、ジョンたちだけでなく地表の全てを燃やし尽くす。

ケイレブとアビーは新たな惑星に降り立ち、人類をこの世に残すのだった。

レビュー・考察

ホラーかと思いきや、キリスト教色強めのSF。

MITの科学者がホラーな手紙に挑む展開はユニークで、飛行機事故や地下鉄事故のインパクトも絶大、実に引き込まれる展開となっている。
ホラーな手紙に敗北し続け、ラストでは謎を解ききって勝利するのかと思わせといて…、宇宙人登場である。
前半のホラー部分はうまく作られていたが、ありきたりな感じになってしまったのが惜しまれる。
親子の別れとか心情面の掘り下げも丁寧に描かれていただけに、もったいない。
ラストまでの期待感が高かっただけに、宇宙人で尻すぼみになってしまった感は否めない。

3つの預言

ルシンダの手紙にはすでに起こってしまった大惨事と、まだ残っていない大惨事が3つ書かれていた。

1つ目は飛行機事故、被害者は81名。すでに太陽光フレアの影響が出ていたことが示唆される。
2つ目は地下鉄事故。預言されたポイントの地下で起こったのがミソ。
3つ目は太陽光フレア、被害者はEVERYONE ELSE。つまり選ばれた者以外すべて。

選ばれた者とはケイレブとアビー、故人だがルシンダも自殺しなければ生き残れたと思われる。
選ばれた者には囁く声が聞こえるようになり、取り憑かれたように数字の羅列で預言を残すようになる。

選ばれし者には黒い石が渡されるようで、ケイレブは宇宙人に直接渡されており、ルシンダの部屋にも落ちていた。
黒い石はルシンダが残した宇宙船の降りて来る地にたくさん落ちていたことから、目指すべき場所を示す道標だったのかもしれない。
この黒い石をダイアナがガソリンスタンドで手にした黒い石はダイアナのものだったのか、それともアビーのものだったのか。

預言者という存在がキリスト教的で、古くは旧約聖書のエゼキエルがこの選ばれし者であったと思われる。

エゼキエルの幻視

劇中でルシンダの絵とアビーの絵が一致するシーンがあるが、これは旧約聖書の預言者エゼキエルの幻視として知られている。

この絵には神・4つの生き物・車輪が描かれており、この絵画の神をアビーは太陽と説明していた。
車輪は神の戦車を運ぶ天使であり、隣に描かれた4つの生き物とセットになっている。

本来神の栄光を描いた絵画だが、本作の神は太陽であり、その太陽が人類を滅ぼそうとしている。
神の怒りに触れた人類の滅亡と、救済のエピソードはノアの方舟を思わせる。
そうなると4つの生き物は宇宙人で、車輪は宇宙船。
神に選ばれたケイレブとアビーは絶滅した地球人類の新たなるアダムとイヴということになる。
博物館のシーンで、ケイレブとアビーが絶滅生物に興味を持っていることが描かれているが、あれは人類が絶滅することを感じ取っての興味だったのかもしれない。

神に選ばれた者は、未来に起こることを知ることになるようだ。
ケイレブの元に訪れた宇宙人は、太陽フレアで燃える森の風景を見せていた。
アビーもエゼキエルの幻視で太陽に滅ぼされる人類を示唆していた。
ルシンダは50年先の出来事を当てており、その不安そうな表情からは人類の滅亡まで見えていたのかも知れない。
自分の命日を知ったダイアナは、未来なんて分からないほうが良いと言っていたが、ルシンダが自殺した理由もその辺にありそうである。

未来が見えてもそれがいいものとは限らない、しかも悪い未来は避けようがなく、どうしょうもない。
それでもあなたは未来を知りたいと思うだろうか?

宇宙のランダム理論と決定論

ジョンが大学の講義で学生に課したテーマである。
太陽と地球の絶妙な距離感が生物を生んだ。
これは完全な偶然(ランダム理論)か、それとも何者かの意図で設定されたのか(決定論)という話。

ジョンの妻は出張先での火災で亡くなっており、以来ジョンはこの世は偶然の積み重ね、ランダム理論だと考えていた。
しかしルシンダの手紙を見て、運命的なものの存在を感じ、もしすべてが初めから決まっているのなら未来を変えたいと思うようになった。

結果としてジョンの懸命の努力の甲斐なく地球人類は滅亡した。
彼の科学者としての勘が示していた通り、どうしようもなかった。
これは予め決まっていたことで、いわば決定論的なラストだったと言える。

生物が生まれるよう地球は太陽と絶妙な距離をとって設置され、計画通りに人類が繁栄し、その性質ゆえに大惨事を何度も起こし、そしてまた滅びることが何者かにデザインされており、そのことを宇宙人は知っていたということになる。

つまりこの宇宙人こそがいわゆる神であり、天使ということ。

新世界

ラストではケイレブとアビーが新たな惑星で生きていることがわかる。
空に浮か星々が地球と全く異なっていることから、地球ではないのは明らか。
金色の草原と白く輝く大樹が幻想的な世界を作り上げている。

2人が楽しそうに走るところで本作は終わるが、ユートピアにたどり着いて幸せですね!で終わってしまったのも残念。
ジョンやダイアナといった亡くなった家族のこととか、滅びた故郷地球のこととか思い出して、生き残った者の苦悩とかを描いてくれたら面白かったと思う。

ラストに行くほど陳腐になる、なんかもったいない映画。

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