2021年のアメリカ映画
出演者はヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世、テヨナ・パリス、ネイサン・スチュワート=ジャレット
黒人アーティストが怪談話に飲まれるホラー映画
こんな人におススメ!
・ちょっと奥深さのあるホラーが見たい
・黒人差別の問題に触れたい
・1992年のキャンディマンのファンの方
映画「キャンディマン」が5分でわかる!
あらすじ
キャンディマンの噂
シカゴの高級マンションに暮らす黒人芸術家アンソニー・マッコイは、恋人ブリアナの弟から、かつてシカゴにあるカブリーニグリーン地区で、ヘレンという女がこの地を調査中錯乱し、凶行を繰り返した後、赤子を連れ去るが失敗し自ら焼死していたことを聞く。
シカゴの街カブリーニグリーンは、かつては庶民向けの団地街で治安の悪いエリアだったが、興味を持ったアンソニーは展覧会に出展する作品にするため、ヘレンのことを調べることにする。
カブリーニグリーンで出会ったウィリアムという住人は、かつてこの街には右手がフックの男がおり、子供に飴を渡す優しい男だったという。
しかし白人少女に渡した飴の中にカミソリの刃が入っていたことで、警察に追われるようになり、壁の中に隠れていたところを見つかり、警察にその場で殺害されていた。
しかしその後、他の飴からもカミソリの刃が見つかり、男は無罪であることが明らかになったという。それ以来、キャンディマンと鏡の前で5回唱えると鏡の中から殺しにくるという。
キャンディマンの影
アンソニーはこの話からインスピレーションを得て「私の名前を呼べ」というアートを完成させるが、キャンデイマンのアートは、展覧会で評論家から酷評される。
その夜、展示会会場に残っていた評論家とその研修生が、アンソニーの作品の鏡の前でキャンディマンと5回唱えると、何者かが現れ研修生の首を切り裂く。
評論家はその場から逃げようとするが捕まって殺される。
このニュースで、キャンディマンを呼び出す方法が、世に知られるようになる。
アンソニーはヘレンのことを調べるため、大学で資料を入手していたが、その帰りエレベーターが突然止まり、床に落ちていた飴を拾うとカミソリで手を切ってしまう。
エレベーターの鏡になっている天井を見上げると血まみれの男が見ており、突然電気が消える。
エレベーターはいつの間にか階下に到着しており、扉が開いたのでアンソニーは慌てて逃げる。
アンソニーは彼の作品を批判した評論家と会うことになり、その席で評論家にキャンディマンの儀式を試すように促す。
評論家がトイレに行ったきり戻ってこないので、心配したアンソニーが探しに行くと、廊下にあった姿見にはキャンディマンになった自身が映っていた。
驚いたアンソニーはその場を後にするが、その直後、評論家が亡くなっているのが発見され、アンソニーは容疑者にされる。
キャンディマンの誕生
アンソニーがウィリアムに話を聞きに行くと、かつてカブリーニグリーンで、ある黒人の芸術家の男が、家畜市場で財を成した白人の工場主の娘の絵を依頼されるが、その女性と恋に落ち妊娠させてしまったという。
黒人芸術家は手を切り落とされそこに肉釣りフックを差し込まれ、胸には蜂の巣を塗りつけられ、最後は火を放たれて死んだと言う。
黒人の悲劇や苦痛はそれからも続き、その象徴がキャンディマンで、キャンディマンは今も存在するという。
アンソニーはキャンディマンを呼んでしまったと思い込むようになり、恐れから異常な行動をとるようになる。
その頃、アンソニーの蜂に刺された右手はボロボロになっていた。
アンソニーが病院を訪ねると、自身の生まれは母から聞かされていたサウスサイドではなくカブリーニグリーンであるという。
アンソニーは母を尋ね事情を聞くと、実はアンソニーは赤子の頃キャンディマンの生贄にされそうになっており、それを助けたのがヘレンだったという。
ヘレンがキャンディマンを倒し、住人たちはその名を封印する協定を結んでいたが裏切り者がおり、生き返ったキャンディマンがアンソニーのもとにくるようになったという。
新たなるキャンディマン
その頃、アンソニーの恋人ブリアナは、アンソニーの自宅を訪ねていたが、アンソニーはおらず、部屋にあったメモを見てカブリーニグリーンのコインランドリーに向かう。
しかしそこでブリアナは何者か拉致され、気がつくと教会の中にいた。
教会にはウィリアムとアンソニーがいたが、アンソニーはすでに右半身がボロボロになっており、意識もない様子だった。
ウィリアムはアンソニーの右手をノコギリで切り落とし、その断面に肉釣りフックを差し込み、アンソニーは新たなキャンディマンとなる。
ブリアナは自ら拘束を解きその場から逃げ出し、追いかけてきたウィリアムをビルの一室で刺し殺す
そこにアンソニーが現れ、周囲に集まってきた警官により、アンソニーは発砲され、ブリアナは警官に逮捕される。パトカーの中でブリアナは警官に、アンソニーを射殺したことの口裏合わせをしないと共犯者とすると言われる。
ブリアナは警官に鏡を見せるように言い、パトカーのバックミラーに向かってキャンディマンと5回唱える。
すると周囲が慌ただしくなり、何者かに周囲の警官が次々と殺される。
現れたのはキャンディマンとなったアンソニーで、ブリアナはパトカーを脱出する。
そしてアンソニーは「全ての者に伝えろ」とブリアナに言い伝えるのだった。
レビュー・考察
キャンディマン
白人に虐げられた黒人の象徴のような存在。
元祖は黒人の芸術家で、白人女性と恋に落ちた末妊娠させたため、怒った白人の父親が、黒人芸術家をリンチしたことに始まる。
黒人芸術家の右手を切り落とし、肉釣りフックを差し込むが、これは白人の父親が家畜市場出財を成した人物で、家畜に使う肉釣りフックをそのまま使ったものと思われるが、これがキャンディマンのアイコンになる。
キャンディマンが全身に蜂を纏っているのは、この黒人芸術家が、胸に蜂の巣を塗られ、ハチに刺させるという拷問を受けていた事に由来する。
それからも白人による黒人への迫害は続き、シャーマンという黒人男性は、白人少女に与えた飴にカミソリの刃が入っていたことで白人警官に殺害される。
結果的に他の飴からもカミソリの刃が見つかり、シャーマンは冤罪であったことがわかる。
そういった黒人の無念がキャンディマンもいう象徴を生み出した。
学校で白人の少女らが面白半分でキャンディマンを呼び出すのはもはやホラーのお約束。
だが、このシーンでトイレの中に隠れていた黒人の少女は無事だったのにはキャンディマンの意思を感じる。
ヘレン
本作は1992年の映画キャンディマンの関連作となっており、ヘレンは過去作の主人公である。
キャンディマンと戦った彼女だが、その伝説には尾ひれがつきまくって、彼女が冒頭で語られるような凶行に及んだことになっているよえである。
真実のヘレンはキャンディマンの生贄にされそうになっていた赤子のアンソニーを助け、母親に返した後、キャンディマンと炎の中に消えている。
その後キャンディマンとヘレンのことは秘密裏にされていたが、誰がその約束を破りキャンディマンの儀式が知れ渡ったようである。
その裏切り者がウィリアムだったのではないだろうか。
全ての者に伝えろ
ラストでは白人警官が、ろくに調べもせずアンソニーを射殺している。
さらにそれを見ていたブリアナにアンソニーが抵抗したので射殺したことにするよう、口裏合わせを強制していた。
ラストでアンソニーがブリアナに言う「全ての者に伝えろ」は、このように白人に理不尽に虐げられた黒人のことを、もっと伝えろというメッセージだったのではないだろうか。
さらに言えば、本作は一貫して横暴な白人に虐げられる黒人という構図で成り立っている。
過去のキャンディマンたちの悲劇はもちろんのこと、現代でも警官はアンソニーに一方的に発砲し、その隠ぺいを図るためブリアナを脅迫していた。
愚かにも遊び半分でキャンディマンを呼び出した白人は誅され、黒人の少女のみが生き残る。(このグループでも白人のスクールカーストが高く、黒人が低いような描かれ方をしている。)
これらのことから「全ての者に伝えろ」は監督から世界へのメッセージだったのではいないだろうか。
ちなみに本作の脚本は「ゲット・アウト」「アス」を手がけたジョーダン・ピール氏。
黒人が主人公のホラーといえばこの人ありである。
ゲット・アウトについてはコチラ!