2022年のアメリカ映画
主演者はグレイス・キャロライン・カリー、ヴァージニア・ガードナー
鉄塔の上に取り残された女性2人を描くスリラー
こんな人にオススメ！
・高いところが好き
・女の友情を感じたい
・強い女性が見たい
映画「fall/フォール」が５分でわかる！【ネタバレあり】
あらすじ
ダンとのお別れ
1年前、ロッククライミング中に落下して夫ダンを亡くしたベッキーは酒浸りで悲しみにくれる生活を送っていた。
そんなベッキーを父も心配していたが、父はベッキーが思うほどダンは立派な男ではないと感じていた。
ベッキーはそんな父に反発し、心配する父を冷たくあしらっていた。
そんな時、クライミング仲間のハンターが、ベッキーを元気付けるため、B67テレビ塔に登らないかとベッキーを誘う。
B67テレビ塔は荒野に立つ高さ600mの鉄塔で、使われなくなった今も飛行機の安全を確保するため天辺の赤色灯が灯っていた。
ベッキーとハンターがB67テレビ塔につくと、そこではハゲワシが弱った動物を生きたまま食らっていた。
冬には取り壊されることが決まっている鉄塔はところどころ錆びていたが、ハシゴで上まで登れるようになっていた。
ハンターは怖気付くベッキーを励まし、ロープでお互いを結んでハシゴを一段一段登っていくが、老朽化した鉄塔はハシゴやネジが次々に外れていく。
ハシゴは鉄塔の内側についていたが、残り60m地点からは鉄塔の外側についており、2人は強風に煽られながら天辺を目指して登っていく。
グラつくハシゴの途中についていたパラボラアンテナを交わして登り続けると、天辺には半径1m程度の天板があり、2人はそこに立ってチャレンジの成功を喜ぶ。
スマホやドローンを使って記念撮影をし、ベッキーが持ってきたダンの遺灰を撒いてダンとお別れをする。
高度600mの遭難
帰路につくためベッキーがハシゴを降り始めた時、朽ちたハシゴは限界を迎え落下、ベッキーも空中に投げ出されてしまう。
ハシゴの上に残っていたハンターとロープで繋がっていたため落下は免れたが、ハシゴがなくなったため下に降りる方法がなくなってしまう。
鉄塔の天辺に取り残された2人は救助を求める方法を探るが、落下の際ベッキーはドローンや飲料水の入ったリュックを、鉄塔上部のパラボラアンテナに落としてしまっていた。
鉄塔の最上部にはスマホの電波が入っていなかったが、下れば電波が入って助けを求められるかもしれないと考える。
ハンターはスマホを命綱に括り付け、高度ギリギリまで下げてみるが電波は入らず、今度はスマホを靴に入れ緩衝材にし、地上に落とす。
双眼鏡で地上を見ると男が塔の下にいたが、ベッキーが靴を投げても気づくことはなく、そのままどこかに行ってしまう。
男は近くに止めたキャンピングカーに泊まっていることがわかったため、日が暮れるのを待って鉄塔にあったフレアガンで合図を送る。
男は鉄塔の上に2人が取り残されていることに気がつくが、それを逆手にとって2人が鉄塔の下に停めていた車を奪って逃げ去ってしまう。
スマホでダンとの思い出を見ていたベッキーは、ハンターの足の刺青からダンがハンターに浮気をしていたことに気がつく。
ベッキーがハンターにそのことを問い詰めると、ハンターはダンと4ヶ月にわたって不倫しており、ベッキーと結婚した後、ハンターはベッキーのためダンと別れていたことがわかる。
残酷な結果
翌朝になっても助けは来ず、状況は変わらないままだった。
この状況にハンターはロープで鉄塔をパラボラアンテナまで降り、落としたリュックを回収することにする。
ハンターはロープを外してパラボラアンテナに飛びつきリュックを回収するが、パラボラアンテナから戻れなくなる。
ハンターは決死の覚悟でロープに飛び移りロープを伝って上に登り、ベッキーはそれを助けるため上からロープを巻き上げようとするが、あと一歩のところでハンターは落下、空中に投げ出されてしまう。
ハンターが手を怪我したため自力で上がれなくなり、ベッキーは1人でロープを巻き上げハンターを鉄塔の上に戻すことに成功する。
回収したリュックから撮影に使用したドローンを取り出し、ベッキーは手紙を挟んで地上に飛ばす。
しかしその途中でドローンのバッテリーが不足し、ドローンを鉄塔の上に戻さざるを得なくなる。
夜ベッキがー目覚めるとハンターの姿が見当たらず、慌てて探すベッキーをハゲワシが容赦なく襲う。
見つけたハンターの姿はパラボラアンテナの上にあり、その遺体をハゲワシが啄んでいたが、それはベッキーが見た悪夢だった。
翌朝、ベッキーは鉄塔の足場の上10m程度の柱上にある赤色灯のソケットから電気をとり、ドローンを充電することを思いつく。
婚約指輪を使ってなんとか充電開始に成功するが、ベッキーは充電完了まで柱にしがみついていなくてはならず、そこにまたハゲタカが襲撃してくる。
それでもベッキー苦難を耐え抜き、ドローンの充電を完了させる。
この頃ベッキーは父がダンの本性を見抜いており、父に冷たい態度をとったことを後悔していた。
ベッキーはモーテルに人が多いチェックアウトの時間を狙ってドローンを飛ばすが、モーテル直前でドローンはトラックに轢かれて大破してしまう。
再び父と会うために
再び日が落ち、遠くから嵐が近づいてくるのが見えていた。
ベッキーがハンターに話しかけると、ハンターの頭部にはいつの間にか出血があり自分は下にいると言い出す。
実はハンターはリュックを取る際落下しすでに死亡しており、ベッキーが話しかけていたのは恐怖が生み出した幻覚だったことがわかる。
死を覚悟したベッキーは父に謝罪するメッセージをスマホに録画し、闘志が戻ってきたベッキーは嵐の夜をなんとか耐え切る。
翌日、弱ったベッキーをハゲワシが啄みにくるが、啄まれているところで目が覚めたベッキーは逆にハゲワシを捕まえその肉を喰らう。
エネルギーを補給したベッキーは、ロープを使ってパラボラアンテナ上で死亡したハンターの遺体の元に向かう。
ベッキーは自身のスマホをハンターの靴に入れ、さらにその靴をハゲワシが啄んでいたハンターの遺体の腹部に入れることで保護して地上に落とす。
夜になり、ベッキーの父が鉄塔につく頃にはすでに救助隊が訪れており、助けられたベッキーは父との再会を心から喜ぶのだった。
レビュー・考察
遭難モノ。
王道は無人島でのサバイバルだが、本作は地上600mの鉄塔の上。
たびたび鉄塔の上から遥か下の地上を見下ろす景色が映るため、終始タマヒュンしっぱなしになる。
高所恐怖症の方は注意してほしい。
地上600mはスカイツリーとほぼ同程度、山だと高尾山頂上くらいの高さ。
その環境はまさに無慈悲、無人島と違い水や食糧を入手することはほぼ不可能で、半径1m程度の足場の上では眠ることすらできない。
その上ハゲワシが弱るのをいつも待っており、たびたびちょっかいを出してくる。
遭難モノでもその難易度は最高レベルである。
女の友情
そんな環境で若い女性が2人、しかも鉄塔の上でドロドロの三角関係であったことが発覚してしまう。
ハンターの性根がよく、反省してダンと別れていたため火曜サスペンスには至らなかった。
しかしこの直後、ハンターはベッキーに謝罪の言葉を残して、リュックを取るためロープ一本で鉄塔を降り、パラボラアンテナ上で死亡する。
無茶な行いでベッキーに贖罪したかったのかもしれない。
ちなみに荷物と共に引き上げられたハンターが水を飲まないのも、知らないはずのプロレスラーの名前を知っていたのはハンターがすでに死亡しており、ベッキーが見た幻覚だったからである。
ベッキーが見たハンターがハゲワシに啄まれる悪夢が現実で、現実は幻覚だった。
結果的にはハンターがパラボラアンテナ上に遺体を残していたため、ラストでベッキーがスマホを保護することができた。
遺体になってもなお親友のべッキーを守り抜くという熱い友情を感じさせる。
目覚める闘志
ベッキーの父はダンの本質を見抜いており、ダンはそんなに立派な人物ではないと語っていた。
そんな父に反発してベッキーは父に冷たくあたったことを悔い、眠っていた闘志を呼び覚ます。
ここからが圧巻で、自身の体を囮にしてハゲワシを呼び寄せ、倒してその肉を喰らう。
エネルギーを補給したベッキーはロープで鉄塔を下るが、パラボラアンテナまではロープが届かないので、途中で惜しげもなくロープを外して飛び移る。
そしてハンターの遺体を使ってスマホを保護して地上に落とすなど、その行動数々は覚悟ガンギマリであると言わざるを得ない、カッコいい…。
そこにオドオドしていた彼女の姿はすでになく、かつてプロレスを一緒に見ていた父に認められた闘志を取り戻していた。
強さを取り戻したこの後のベッキーの人生はきっと実りの多いものになるだろう。
巧みな伏線回収を見せる良作
映画の設計が上手く、前半の伏線を後半で丁寧に回収している。
ベッキーの父がダンは立派な人物でないと語っていたのもダンの浮気の伏線である。
ドローンの充電に赤色灯のソケットを使うアイデアは、前半のモーテルで、ハンターが電球のソケットを使ってスマホを充電していたのをベッキーが見ていたのが伏線になっている。
鉄塔の入り口で動物がハゲワシに啄まれているのを見て適者生存と評していたが、最後はハゲワシがベッキーに食われるものまた適者生存である。
話としてはとても面白いのだが、立ち入り禁止になっている鉄塔に勝手に登ってその様子を配信しようとしていたあたり、ほとんど迷惑系ユーチューバーである。
いい話なのだが、きっかけがそこなだけにどうにも同情しきれない。
