日本の未来を映し出すかつての先進国の話
あらすじ
車上荒らしのシロが用を済ませ、車から出ようとするがドアが開かず閉じ込められる。
銃でガラスの破壊を試みるが、ガラスは傷一つつかないどころか、跳弾で自らの足を傷つけてしまう。
付近に通りかかった人に車内は見えておらず、当然スマホの電波も入らない。
翌日カーナビに車の持ち主エンリケから着信が入り、この車が完璧な防犯仕様で脱出不能なことを教えられる。
エンリケは何度も車を盗まれたり、孫娘が犯罪に巻き込まれたりしたため犯罪を憎んでいた。
そんな時、別の車上荒らしがシロの乗っている車を荒らそうとしていたが、街の人に見つかり暴行を受ける。
警察が来てもなんの役にも立たず、さらに車内に映る貧富の差をキケが解説するのを食い入るように眺めるシロ。
翌日エンリケはシロの自宅を訪ねたことを話し、エンリケの妻に大金を渡して家を出るように助言したという。
エンリケは俺が何をしたと嘆き悲しむシロに彼の犯罪歴を話し、その罪を教える。
絶望に拳銃自殺を試みるシロだったが、弾が出ず失敗に終わる。
そんな彼の前にとうとうエンリケが姿を現す。
エンリケに発砲して脱出するシロだったが弱っていた彼はエンリケに簡単に捕まる。
しかしそこに警察が現れ、エンリケがシロに銃を突きつけたまま状況は膠着する。
マスコミはエンリケの私的制裁の是非を世間に問い、シロこそ社会の犠牲者なのでは問いかける。
警察が呼んだネゴシエーターの説得にエンリケはとうとうシロを解放し、シロはその場で逮捕される。
車の中に入ったエンリケは車を爆破し、壮絶な自死を遂げる。
レビュー
さて、邦題で損しているシリーズですな。なんだよ殺人四駆って…
ジャケットもひどいけど、ホラーじゃありません。全くホラーではありません。
アルゼンチンが舞台、治安は最悪で警察も当てにならない。
貧富の差もひどく、1000ドルの犬を連れた女と腐ったリンゴを持つ哀れなホームレスが同じ道を歩く。
日本の反対側にあるこの国、かつての大国なんだけどな、一応。
そして未来の日本の姿である。
そんな国のチンケな車上荒らし、哀れなことにエンリケのドロボウホイホイに捕まってしまう。
そのいじめ方が、まさに生かさず殺さず、ひたすら生ゴロシで実にえげつない。
紙を食って飢えを凌ぎ、緑色のクーラントを飲んで乾きを癒す。
でも本当に死にそうになったら何故かブレーキの裏にあるクッキーを与える。
いっそひと思いにやってくれ…とみてるだけでも思わずにいられない。
さらにシロの家族にまで手を出して精神攻撃も忘れない。
真夏に暖房入れたりして容赦なく追い詰めてはギリギリで希望を与えてまた絶望させる。
死に至る病は絶望だってエライ人が言ってた。
映画じゃ描けないだろうけど糞尿とかどうしてんだよ…
街の真ん中の車中でサバイバル、実は無人島よりずっと厳しい。
偏向ガラスで街ゆく人の姿は見えるのに、誰もシロに気がつかない。
1人の孤独よりずっと孤独だよな、よう考えるわ。
シロは孤独の中で1匹のコオロギを友にするんだけど、この辺りキャストアウェイのバレーボールだよな。
最後は私的制裁の是非を問う形になり、シロが悪いのかシロを犯罪者にしてしまった世間が悪いのかという話になる。
エンリケも実は評判のいい産婦人科医なんだよな、実は。
そんな真面目に働いてきた人からしたら許せないだろうな、犯罪者なんて。
どっちが正しいなんて一概に言えないけど、やっぱシロが悪いよな。私的制裁の是非はともかく。
そんなちょと考えさせられる一本、日本の未来を占って見てみてはいかが?