インドの実態を克明に描く感動作
2016年のオーストラリア、アメリカ、イギリス共同制作映画
主演者はデーヴ・パテール、ルーニー・マーラ、デビッド・ウェナム
5歳で離れ離れになった両親を、Googleマップで探すドラマ映画
こんな人にオススメ!
・インドの社会問題に興味がある
・グーグル先生の凄まじさを改めて知りたい
・両親の愛を感じたい
映画「LION/ライオン 〜25年目のただいま〜」はどんな映画?
あらすじ
インドの田舎町で母親と兄妹たちと暮らす5歳の少年サルー。
兄と取った石炭をミルクと交換してもらっている時、目に入った真っ赤な揚げ菓子を兄にねだるももらえず、帰路につく。
その夜働きに出る母と兄に制止を振り切ってついていくサルー、しかし夜遅くなり駅で寝てしまう。
起きると兄の姿はなく、大きな給水塔だけが光っていた。
止まっている無人の電車を探すサルー。
しかし兄の姿はなく、電車の中でねむってしまう。
眼が覚めると電車は動き出しており、見知らぬ駅に止まる。
乗ってくる人をかき分け電車を降りるも母や兄の姿はない。
駅で帰りの電車に乗ろうとするもベンガル語が使われており、サルーのヒンディー語は通じなかった。
やむなく駅で他の少年たちとともに眠ることにしたサルーだが、深夜目を覚ますと他の少年たちは大人に連れさられている所だった。
危機一髪逃れるサルー。
その後数ヶ月身寄りのない生活をしていたサルーに女性がヒンディー語で話しかける。
食事と風呂をもらうサルーだったが翌朝男に体の状態をチェックされる。
いいところに行こうと言う男だったが、サルーは危険なものを感じ隙を見て逃走する。
その後サルーは警察に届け出られるが、覚えていた故郷の名前ガネストレイは知らないと言われ孤児院に送られる。
孤児院は多くの少年少女が詰め込まれた劣悪な場所だったが、孤児の支援をしているミセススードによりオーストラリアのブライアリー夫妻を紹介され、その養子となる。
さらに2年後、ブライアリー夫妻の元にインドよりマントシュが養子に来る。
マントシュはおとなしいサルーと違い精神的に難しい部分を抱えていたが、2人とも夫妻の元で育ち20年が経過した。
青年になったサルーはメルボルンの大学に入り、ホテル経営を学んでいた。
そこで友人たちとホームパーティをしていた時、あの真っ赤な揚げ菓子が目に入った。
遠い故郷の記憶を刺激されたサルー、友人達にそのことを話すとgoogle earthなら地球中を探せると提案される。
迷子になったサルーの20数年ぶりの帰宅が始まろうとしていた…
レビュー
驚くことに実は実話シリーズである。
インドで迷子になった少年がオーストラリア人夫妻の養子となり、実の母を探すというお話。
この映画、どうしてもサルーがインドの母を探すところが注目されがちだけど、私が注目して欲しいのは前半のインドのシーン。
インドが多くの人口と複雑な民族、宗教を抱えた難しい国なのはみんなも知っての通りだけど、じゃあ具体的にどんな問題を抱えた国なのか?
それについて明確なイメージを持っている人は少ないだろう。
複雑な民族と宗教はこの映画でもサルーがついた駅で言葉が通じないところによく表れているね。
東京と大阪で訛りレベルではなく言語そのものが違うイメージかね⁇インドはもっと距離はありそうだけど。
そういう難しさは、それを乗り越えてインドとパキスタンの架け橋となったミルカで詳しく扱ってたね。
この映画ではさらに人口が多すぎて子供が道にあふれている状況を克明に描いている。
サルーが入れられた孤児院だってほとんど刑務所だもんなぁ〜
さらに国自体が貧しいからか、サルーを人身売買しようと近づいてくる夫婦とかスゴイ世界だよな。
インドへ旅行に行った人の話とか聞くと平気で騙してくるとか聞くけど貧しい背景があるのかもしれない。
サルーが一人で迷っていても誰も助けないし、駅で寝てればなにものかにつれさられてしまう。
これが修羅の国か…
サルーは運よくオーストラリア人夫妻に育てられ何不自由ない生活を送ることができたけど、ほとんどの子供がそうでないと思うとやるせなくなるね。
また、夫妻がサルーを引き取った理由が拝金主義の日本人と白人の世界観の違いを表していて面白い。
そんなサルーが遠い故郷を探すために選んだツールがgoogle earthというのが現代的でいいね。
よくよく考えるととんでもないツールだよな、家にいながら世界のどこにでもいけるんだから。
実際にはこの捜索にはFacebookも大活躍したらしい。
これも世界のどんな人とでも繋がれる、すごツールだよな、よくよく考えると。
みんなもお正月、実家に帰ってのんびりしたかもしれない。
帰れる故郷が安全で言葉の通じるところって素晴らしいね!
そして育ててくれた両親に感謝しよう、きっとあなたを心配してくれている。
ちなみに現在のサルーことサルー・ブライアリ氏は世界中で公演を行う一方、インドで孤児院を営みオーストラリアへの養子縁組を積極的に進めている模様!
自分が受けた幸運を、他の人にも分けようって発想が素晴らしいね!
興味があったらこの奇跡をサルー・ブライアリ氏自身が書いた小説「25年目の「ただいま」」も読んでみよう!
映画には書ききれなかった細かいところまで丁寧に書き込まれています。