2000年のアメリカ映画
主演者はジョージ・クルーニー、マーク・ウォールバーグ
嵐に巻き込まれた漁師達の熱き戦いを描くパニック映画
こんな人にオススメ!
・嵐の中でも前を向く人
・死中に活を見出す人
・快男児
映画「パーフェクトストーム」が5分でわかる!
あらすじ
次の漁へ
1991秋、漁船が長きにわたる漁から帰ってきた。
漁の最中アル中の漁師が亡くなっていたが、社長は気に止めることなく、今回の不漁を嘆いていた。
社長は漁師たちに報酬を払っていたが、その場で船長のビリーに今回の不漁を責めたため、ビリーは次はグランドバンクスのその先を目指すと宣言する。
漁師たちはダイナーで帰還の宴を開いていたが、その場でビリーより次の漁が明後日からに決まったと知らされる。
新米漁師のボビーの恋人は、ボビーが漁に出ることは反対だったが、ボビーは金が必要なのであと一回だけ漁に出るという。
そして漁の日、漁に向かうボビーを恋人が引き止めるが、ボビーは聞かずに漁に向かう。
他の漁師たちも、それぞれに大切な人に別れを告げて船に乗り込み、漁に向かう。
豊漁
セーブル等島付近のポイントに着いた漁師たちは夜を徹して漁を行い、次々とカジキを釣り上げる。
しかし次第に大物は採れなくなり、付近には大嵐が迫っていた。
大物に焦った漁師たちは、ホホジロザメを釣り上げてしまい、足を咬まれて怪我をする。
さらに漁師の1人が誤って海に落ちてしまうが、仲間が助けて一命を取り留める。
立て続く不幸に船内には諦めムードも漂っていたが、ビリーは嫌なら降りろと叱咤し、フレミッシュキャップというポイントに向かう。
他の漁船の船長でビリーの親友やリンダは、大量に恵まれていたが、その船は大雨に降られていた。
ビリーと無線で通信したリンダは、この海域に三重の嵐が迫っており、フレミッシュキャップは嵐のコースから外れるものの、帰りに嵐に遭うと警告する。
フレミッシュキャップは好天で、漁師たちはこれまでの鬱憤を晴らすように大漁を喜ぶが、製氷機が壊れたため、急遽港に戻ることにする。
しかし帰路は嵐の真っ只中だった。
船長はここに数日留まるか、嵐の中を突っ切って戻るか選ばせ、漁師たちは獲った魚を持ち帰るため一路嵐の中に飛び込むことにする。
この嵐は前代未聞の完璧な嵐であり、気象予報士はパーフェクトストームと名付けていた。
危険な路
その頃リンダは、ビリーに嵐が重なり危険なことを無線で知らせていたが、無線が壊れたこともありビリーは嵐の中に向かってしまう。
リンダは沿岸警備隊にビリーの船の救助を求め、その知らせを聞いた沿岸警備隊のビリーらの救助に向かう。
ヘリは同じように救助を求めていた人々を警備隊の船に降ろし、空中給油を待ってビリーらを助けることにする。
ビリーらは大波に揉まれており無線もアンテナも失い、さらに固定から外れた錨がブリッジに直撃する。
ガラスの割れたブリッジには容赦なく海水が入り込み、漁師たちは船外に出て決死の補修作業で、固定の外れた錨をバーナーで焼き切ることに成功する。
沿岸警備隊のヘリは嵐で空中給油に失敗し、燃料切れで着水を余儀なくされる。しかしヘリは墜落し、隊員達は緊急脱出をするが、その際に何人かが行方不明になる。
ビリーらはブリッジの割れた窓を塞ごうとしていたが、舵を波に取られて漁師2人が海に落ちる。
なんとか救助に成功するも、漁師たちは魚を諦めて沖に引き返すことにする。
嵐との戦い
漁船は決死の航海を続けていたが、ブリッジで操船を続けるビリーとボビーの前に大波が現れ船はついに横転するかに思われた。
しかし船は奇跡的に一回転し、無事に大波を越えることに成功する。
峠を乗り切った漁船の前には光が差し込み、波も落ち着き、生還できそうだという希望が現れる。
しかしその直後、嵐は再び漁船に襲いかかり、壁のような大波についに漁船は転覆してしまう。
船室にいた漁師たちを容赦なく海水が襲い、ブリッジにいたビリーとボビーも追い詰められる。
ビリーはボビーに船外に脱出するように指示するが、ビリー自身は沈没する漁船と運命を共にする。
嵐の海上に出たボビーだったが、大時化の海の前にどうすることもできず、恋人に愛の言葉を独り告げる。
1週間後、懸命の捜索の甲斐なく漁師たちは見つからず、その葬式が営まれた。
リンダは彼らに弔辞を述べ、ボビーの恋人もボビーのもう見れない笑顔を思い浮かべるのだった。
そしてその後リンダは録音したビリーの声を聞きながら再び漁に出るのだった。
レビュー・考察
実は実話シリーズ。
1997年の実話を元にした小説「パーフェクトストーム」の映画化作品。
舞台はアメリカの港町グロースター。
グロースターでは海の事故はつきもので、この映画を1623年以降海で亡くなった人々に捧げるとラストで締め括られている。
個性豊かな海の仲間
本作は個性豊かな漁師たちが、嵐で大しけの海に挑む作品となっている。
嵐に挑むイカれた漁師たちを紹介する。
ビリー:船長。いつも強気だが、それが故に命を落とすことになった。
ボビー:新米漁師。恋人クリスティーナのため漁に出る。
マーフ:妻と離婚し男で一つで男児を育てている。サリーとは不仲。
ハグジー:モテないのが悩み。恋人ができそうになるが…。
サリー:マーフにしつこく絡むが、海に落ちた彼を真っ先に助けるなど根は優しい。
アルフレッド:影が薄い。ビリーの漁船で彼だけニックネームがない。
リンダ:ビリーとは別の漁船の船長で、ビリーの親友。
強く明るく逞しく
この漁師達、いつもとんでもなく底抜けに明るく前向き。
いつも子供のようにはしゃいでおり、大漁の時はもちろん、嵐に挑むことになってもいっちょやってやろう感マシマシである。
絶望の中にあっても前向きな気持ちを忘れず、仲間達とハイタッチを交わし合う。
なんとも気持ちの良い男達が描かれている。
サリーとマーフは不仲だったが、マーフが落水した時に真っ先に助けに海に入ったのはサリーだった。
普段の諍いなんて関係ない、アメリカの海の男はそんな小さいことは気にしないのだ。
さて、漁師たちはグランドバンクスで漁をしていたが獲れず、さらに東のフレミッシュキャップで大漁を上げる。
しかし製氷機が壊れたため、魚を持ち帰るため急遽港に引き返すことにするが、その時退路は既に嵐に見舞われていた。
ここで嵐が過ぎるのを待つか、嵐の中魚を持ち帰って金を得るかの選択を迫られるが、ここで嵐の中の強行策を選択してしまう。
さらに帰路で嵐に阻まれ結局、魚を諦めて沖に戻る決断をしており、中途半端と言わざるを得ない。
この決断は結果だけに見れば愚かしさでしかないが、行手を阻む嵐に立ち向かう無謀さを孕んだ勇気が、実に彼ららしく痛快。
ビリーらはリンダに無線で無謀を責められるが、危険を承知で挑むあたり”漢”である。
結局漁船は転覆し、ビリーとボビーは浸水するブリッジで言葉を交わすが、最後までよく戦ったよなとお互いの健闘を讃えていた。
そう、たとえ愚かな決断でも、戦う前から敗戦したくなかったのだ。
振り返って我々はどうだろうか。
漁師達のように楽しそうな顔で働いている日本人が果たしてどれだけいるだろうか?
みんな満員電車で死んだ顔、誰かが困っても見てみぬふり。
困難なチャレンジは決してしない。
失敗を責められるくらいなら初めから挑まない、そんな負け犬根性が染み付いてはいないだろうか。
挑戦者を結果論でなじる卑怯者ばかりで、傾く者のいなくなった世の中で見ることのできる夢などない。
リアリティ溢れる社長と理想の米軍
漁師の社長は漁で死人が出ても大して気にした様子もなく、すぐに漁の成果を気にするなど、金を第一と考える人物として描かれている。
社長がビリーの不漁を責めたため、功を焦ったビリーは無茶な漁に挑むことになる。
ビリーが嵐の中にいることを知った漁師の家族達から猛烈に非難されるが、仕事だと言い切るあたりサイコパス風味。
賠償金払って倒産するがよい。
この社長だけは嫌に生々しく日本人らしいのは何故だろうか。
ちなみに嵐に揉まれていたのはビリーらの漁船だけではない。
ヨットで航海していた一行も沈没の危機にあり、空軍の巡視船に保護されていた。
沿岸巡視隊はリンダの要請を受け、ビリーの漁船を保護しようとしていたが失敗し、隊員1人が帰らぬ人となる。
国民の危機に、命を顧みずにその命を救ったヒーローとしての米軍を描きたかったのだろうか。