2020年のアメリカ映画
主演者はライアン・グズマン, カイル・ガルナー, アリックス・アンジェリス
ヤラセの除霊動画で儲けている偽エクソシストと悪魔が戦うホラー
こんな人にオススメ!
・ありきたりなエクソシストものには飽きた
・実は隠している罪がある
・悪魔のインターネット活用に寛容な方
映画「バトル・インフェルノ」が5分でわかる!
あらすじ
エクソシスト系チャンネル「除霊の時間」
エクソシスト系動画配信者マックスは、幼馴染で親友のドリューとヤラセの除霊番組を作って配信とグッズ販売で儲けていた。
ドリューの婚約者レーンは、ドリューがマックスに利用されていると考えており、ドリューにマックスと手を切って欲しいと考えていた。
この日は番組の収録日だったが、出演を予定していた女性がいつまで待っても収録に現れない。
やむをえず、ドリューはレーンに来れなくなった女性の変わりを務めるように頼み、レーンは悪魔に憑かれた女性の役として両手を椅子に固定される。
世界中のファンが配信を見守る中、マックスはいつも通り除霊を開始する。
しかしレーンは突然絶叫しドリューの指示に従わない。
さらにマイク係のクリスは突然倒れ、駆け込んだな洗面所で鏡から出てきた手に突き飛ばされて意識を失う。
ずっと俯いていたレーンは「プスウスタイ」と意味不明な言葉を呟いており、マックスの顔を殴り飛ばす。
レーンが顔を上げると悪魔のような形相になっており、悪魔に取り憑かれたようだった。
レーンに取り憑いた悪魔はタトゥーのあるスタッフを見つけ呼び出すと、スタッフはタトゥーから火を噴き出して焼死する。
悪魔は撮影現場から逃げたら全員殺すと予告し、視聴者への配信を意識した言動をとるようになる。
悪魔はマックスが本物か確かめるために現れたといい、マックスはいつもの番組のように除霊をしようとするが、悪魔の名前がわからないので効果がない。
視聴者参加型悪魔配信
悪魔はどうやってマックスがレーンを救うか視聴者が決めろといい、視聴者にこの後のマックスのアクションをコメントで決めるように指示する。
ドリューは悪魔の辞典というホームページで悪魔の正体を探ろうとするが、その途中で悪魔にパソコンを止められてしまう。
視聴者が決めたアクションはマックスがストリップをするというふざけた内容で、ドリューは配信を切るからコメントに従うように言う。
しかしマックスが脱ぎ始めても配信を切ることができず、マックスの裸体が全世界に配信されてします。
悪魔はそれでも飽き足らず、スタジオの設備を天井から落下させ、マックスの目の前に天井の大型ファンがくるようにする。
さらに楽しげなダンスミュージックを流し、マックスを音楽に合わせて踊らせる。
マックスは大型ファンの前で手を差し出した踊ったため大型ファンで手を切り、さらに裸足でステップを踏んだので落下していたガラスを踏み苦痛に顔を歪ませる。
苦痛の中マックスは幼い頃、ドリューとイタズラがきをしていて老婆の教師に叱られ懺悔させられたことを思い出していた。
悪魔への懺悔
悪魔は視聴者が50万人を超えたのに満足するとマックスを踊りから解放した。
ドリューはマックスに応急処置をしていたが、その時スタッフの女性が悪魔が呟いていた「プスウスタイ」という言葉が嘘という意味であることに気がつく。
その意味を探る間もなく、レーンの体は悪魔とレーンの人格が交互に現れ、レーンが悪魔と戦っていることがわかる。
突如レーンが呼吸ができなくなったので、マックスがその喉に手を突っ込むと、喉からマックスが除霊用に販売していた布が出てくる。
ドリューは嘘を告白するようにマックスに言い、マックスはその布が除霊の効果などないただの布であることを視聴者に告白する。
それでもまたレーンが苦しみ出したので、マックスはもう一度喉に手を突っ込むが、その途中でレーンの体は悪魔に乗っ取られ、マックスの指は悪魔に食いちぎられてしまう。
その口からは一枚のコインが出てきたため、ドリューは実はマックスより多く番組の分前をとっていたことを告白する。
泣きながら抱き合うマックスとドリューだったが、マックスは多くとった分は利子をつけて返せとドリューに言う。
悪魔はまだ何かの罪を告白させたがっており、配信時間が足りないのを気にしていた。
しかしいつもと違う過激な配信内容に視聴者が集中し、配信はサーバーダウンしそうになっていた。
悪魔は配信が途切れればレーンを殺すと脅すとその直後悪魔は姿を消し、体にはレーンの人格が戻る。
ドリューは配信を回復させるべく洗面所の機械で作業をし、なんとか配信停止寸前にに作業を完了し通信が安定させるが、その直後レーンの体に悪魔が戻ってくる。
マックスは幼少期老婆の教師に懺悔させられている時、ドリューが老婆の教師に執拗な体罰を受けたことを思い出していた。
マックスの過去
ドリューは洗面所で倒れていたクリスを見つけるが、クリスは化け物を見たと怯えていた。
ドリューはクリスから化け物の容貌を聞き出し、その特徴を悪魔の辞典で検索するといくつかの悪魔の名前がヒットする。
1人トイレに隠れていたクリスだったが、化け物に襲われスタジオに逃げ込む。
クリスには犬のような化け物が見えていたが、マックスやドリューにはその姿は見えなかった。
マックスが懺悔しても化け物の姿は消えず、マックスがクリスと聖母マリアの絵画の前で祈ると姿を消した。
しかしそれも束の間、クリスは化け物が食いついてるのがまだ見えており、それを払おうとしたクリスは自らをナイフで切り刻んで死亡してしまう。
悪魔はマックスに自殺させようと絞首台を用意するが、悪魔はマックスの運命を視聴者に決めさせようと視聴者から送られるハートが100%をキープできれば見逃してやろうと言う。
絞首台に上がったマックスには幼少期に老婆の教師の姿が映っており、真実を告白しろと囁いていた。
マックスは視聴者に向け、自身が元神父のペテン師で除霊番組はヤラセであることと、幼少期ドリューに体罰を加えていた老婆の教師を意図せず殺してしまったことを告白する。
マックスはそれ以来老婆の霊に取り憑かれており、神学校に通うようになったのだ。
しかし教会に近づくほど腐敗を感じるようになり、神学校で学んだことを活かして番組を始めていた
全てを告白してもなお悪魔はマックスの首をロープで締め上げるが、突然レーンの意識が戻り苦しみ出す。
マックスとレーンが苦しむ中ドリューは慟哭し、意識を取り戻したレーンに寄り添う。
ドリューは配信を切って悪魔に対抗すると、悪魔はマックスを解放し、レーンの体に戻ってきて配信を戻せと言う。
本物の悪魔祓い
ドリューは悪魔の言葉からその正体がアモンという名であることを突き止め、マックスは悪魔を倒すところを世界に見せたいと配信を再開するようドリューに指示をする。
ドリューはマックスにアモンを倒す呪文を伝えようとするが、ドリューが悪魔に拘束されてしまう。
悪魔はまだレーンにも告白すべきことがあると言うと、体にレーンの意識が戻る。
レーンはかつてマックスと付き合っていたことを告白するが、その時スタジオのモニターにマックスがかつて撮影していたレーンのハメ撮り動画が流れる。
マックスは動画を消すはずだったが消しておらず、激昂したドリューに殴られる。
ドリューはマックスの首を絞め上げるが、配信中の画像を見て我に帰る。
ドリューが自らのスマートグラスに映った呪文を唱えると悪魔は苦しみだし、悪魔はポルターガイストで攻撃してくる。
倒れたドリューの後に続くべくマックスが呪文を唱えると悪魔は動かなくなり倒されたかに見えた。
しかしドリューが拘束を解くと再び暴れ出しマックスを殴り始めたので、ドリューは呪文の書かれた書物を使って呪文を最後まで唱える。
悪魔はレーンの体から完全に出ていき、レーンの意識が戻る。
絶望の幕開け
生き残った誰もが安堵していたが、その時突然焼死したスタッフの死体が動き出す。
死体は自分はアモンではなく、ドリューが使っていた悪魔のリストも自分のものだと話し始める。
死体の中から悪魔そのものがその姿を現し、配信中のカメラに向かって呪いの言葉を投げかける。
配信終了とともに悪魔は姿を消すが、配信を見ていた世界中の視聴者たちは次々と自我を失い周囲の人々を攻撃し始める。
大統領の息子も配信を見ていたため悪魔に自我を乗っ取られれ、大統領を刺殺しどこかに姿を消す。
生き残ったドリューはレーンを連れて帰り、1人残ったマックスは新規フォロワーが400万人のを超えたのを見てニヤリと微笑むのだった。
レビュー・考察
邦題で損しているシリーズ。
三流アクション映画みたいなタイトルだが、本作はエクソシスト系ホラーである。
原題は「The Cleansing Hour」、直訳すると浄化の時間である。どうしてこうなった…。
登場人物や舞台が少ない低予算型映画だが、俳優の名演やちょっとしたコメディ、よくあるエクソシストものを動画配信と融合させたセンスなどが光っており、かなり魅せられる映画に仕上がっている。
悪魔に取り憑かれたレーン役の女優の名演技が特に素晴らしく、レーン時の可憐さと悪魔時の形相の演技の使い分けは本当にスゴイのでぜひ注目してほしい。
エクソシスト系配信者マックスとドリュー
マックスとドリューは幼馴染みの親友で、マックスが神父役・ドリューが機材による配信を担当し、ヤラセの除霊動画とグッズ販売で儲けていた。
グッズの宣伝であるマックスのスマイルと“バチカン公認“(もちろんウソ)がジワッと面白い!
チャンネルの知名度は高く、オフで遊びに行っていたカラオケで女性から逆ナンされるくらいには人気があったが、マックスはそのハメ撮り動画を撮っていた。
このことが後々レーンとの関係が明らかになった時、ドリューの怒りを買うことになる。
神のような悪魔と悪魔のような神
本作のテーマはエクソシスト映画同様悪魔と神であるが、その役割はこれまでの映画とはまるで違う。
本作の悪魔の特徴はマックスらが抱える罪を次々と告白させいることにある。
嘘で塗り固めた動画配信の真実を告白させるのは、さながら神の前で行う懺悔のようである。
懺悔室のようなクローズドな環境でなく、配信でオープンに懺悔させるのが悪魔的手法なのかもしれない。
ドリューが収益の分け前を実は多く取っていたことを告白した時、マックスと抱きあって許し合うのかと思いきや、マックスが「多く取った分は返せよ、利子をつけてな」とわざわざ言いにくるのはジワッと面白い!
この悪魔には、日本の政治家の皆様の元にも現れてもらい、ぜひその懺悔を動画配信していただきたい!
悪魔が人に懺悔を強いる一方、本作中の神は一貫して何もしてくれない。なんなら神の側こそが悪そのものですらある。
その例がマックスとドリューが幼い頃通っていたカトリック校のシスター老婆である。
シスター老婆がドリューに体罰を加えたため、マックスが止めようと老婆を突き飛ばすしたところ、シスター老婆はバランスを崩し、たまたま落ちていた尖った鉛筆が目に刺さり死亡する。
以来マックスはシスター老婆の霊に悩まされることになるが、その姿は完全に悪霊である。
神の側が悪魔っぽいのは本作に込められたメッセージであるのではないだろうか。
霊障に悩まされたマックスは神学校に通うようになったが、そこでは教会の腐敗を実感するだけだった。
神はいないことを悟ったマックスは、ヤラセの除霊動画で儲けることにしたが、神学校で学んだ技術でヤラセの除霊を行うのはなんとも神に対する皮肉を感じさせてくれる。
悪魔の目的
さて、なぜ悪魔はマックスの配信に現れたのだろうか?
悪魔はマックスが本物か見極めるためだと行っていたが、それはおそらく嘘である。
悪魔の本当の目的は、視聴者が多いマックスの配信を使って呪いを世界中にばら撒くことである。
悪魔が最初から視聴者を意識していたのも、常に視聴者に意見を求めて参加を促していたのも視聴者を増やすための方策であり、視聴者50万人突破に満足してマックスのストリップをやめさせている。
マックスが死亡したりして配信を止められえると一番困るのは悪魔なのである。
配信は悪魔の正体がアモンであることがわかり、マックスとドリューが交代で呪文を読み上げるところで最高の盛り上がりを見せる。
善が悪を制し、視聴者数が増えきったところで、焼死体から悪魔が登場する。
この悪魔の正体は明確にされていないが、ウェブサイト「悪魔の百科事典」の持ち主と言っていたことから、悪魔界のキリストのような存在であると推察される。
部下のアモンが倒されたので、親分自らが出てきたのではないだろうか。
悪魔は配信で世界中に呪いをばら撒き、それを見た視聴者が次々と殺人事件を起こすようなる。
大統領までもがその凶刃に倒れ、世界は地獄のような光景が繰り広げられるようになる。
マックスの配信のおかげで、悪魔としては最高の結果となったのだ。
ジワッと感が光るコメディ要素
本作は単なるホラーだけでなく、ちょっとしたコメディ要素を各所に取り入れている。
その塩梅が実にちょうどよく、ホラーな作風を壊さない程度に、実にジワッと面白くさせてくれる。
一例として、マックスが販売する除霊用具の宣伝。
マックスのスマイルとバチカン公認の謳い文句が実に胡散臭てジワッとくる。
さらにはマックスがドリューに分け前の返還を求めるシーン。
そこは抱き合って罪を許し合う流れじゃないんかーい!思わずツッコミを入れたくなる。
しかも利子を付けてって鬼かアンタ!
極め付けは、クリスの死亡シーン。
ドラッグの乱用者だったクリスは、悪魔によって犬のような化け物の幻覚を見せられたため、自らを切り裂いて死亡した。
その最期を見て「よい子のみんなは、ドラッグはやっちゃダメだぞ」とカメラ目線で諭すところ。
大統領の息子という良い子の代表者みたいのもこの配信見ているんですけど…
やはりこの悪魔、どこか天使のようですらある。
低予算B級ホラーの傑作
登場人物も少なく、舞台もほぼスタジオ内のみ。
そんな低予算映画ながら、昔ながらのエクソシストと最新の動画配信という要素を組み合わせて、見事な脚本に仕上げた傑作。
悪魔も動画配信で呪いをばら撒いたり、ウェブサイトで悪魔の百科事典を作成し認知度も向上に勤めているあたり、悪魔界もシェア拡大のため努力をしているのだなと妙に関心をしてしまった。
ラスト唐突に実体を表す悪魔には賛否が分かれると思う。
個人的にはアモンを倒して、マックスが400万人を超えたフォロワーのアカウントを削除してハッピーエンドで良かったかなと感じる。
それでは物足りないと捻った結果なのだろうが、ちょっと捻りすぎかもしれない。
ラストで400万人を超えたフォロワー数を見てニヤッとしたマックスは、この後どうするのだろうか…その先は想像の余地を残すラストになっている。