2021年のアメリカ映画
主演者はニコラス・ケイジ、アレックス・ウルフ、アダム・アーキン
偏屈な老人が攫われた飼い豚を探すドラマ映画
こんな人にオススメ!
・大切な人を亡くしたことがある
・悲しい出来事から立ち直りたい
・静かな雰囲気の映画が好き
映画「pig/ピッグ」が5分でわかる!
あらすじ
パート1:田舎風マッシュルームタルト
偏屈な老人ロブは、山小屋で1人飼い豚とトリュフを探して生きていた。
その日は山で見つけたキノコでタルトを作り豚とそれを分かち合っていた。
翌日トリュフを買い付けに来る食品卸売り業の若者アミールが、スポーツカーでロブに会いに来る。
アミールにトリュフを渡したロブは、古いカセットテープを取り出しデッキに入れるが、その冒頭だけ聞いて再生を止めてしまう。
ある夜何者かに自宅を襲われ豚を奪われてしまう。
ロブは山を下り、豚を探すためアミールとマックという女性を訪ねる。
ロブが目撃していた車の特徴から、マックの取引先のカップルが犯人であることがわかるが、すでに豚は他の人物に売られており、見つけることはできなかった。
ロブは豚を買ったという都会の男に心当たりがあったため、アミールとポートランドの街に向かいある男を訪ねる。
しかし男はかつてロブは名の通った人物だったが、今ではいないも同然で価値がないと語り、何も教えてくれなかった。
次にロブはあるレストランを訪ね、その厨房内に入っていく。
ロブはポートランドホテルに向かうと言うが、そんなホテルは現存しておらず、アミールは計画を明かさないロブに苛立っていた。
ロブはポートランドホテルはすでに取り壊されているが、その地下二階はそのまま残っており、そこにいるエドガーという男に会いに行く計画を明かす。
ロブは厨房奥の隠し扉を開けるとその奥ではアンダーグラウンドな賭け事が行われていた。
ロブは賭けに参加するが、その賭けは相手に一方的に殴られるものでロブはノックアウトされてしまう。
目を覚ましたロブがエドガーに豚を探していることを伝えると、一枚のメモを渡される。
パート2:ママのフレンチトーストと帆立貝の創作料理
ロブはかつて有名なシェフで、アミールの父と自殺した母もそのレストランに行っていた。
ロブの店に食事に行った時のアミールの両親はとても上機嫌だったとアミールはロブに語る。
ロブはアミールにフィンウェイという有名シェフの店の予約を頼むが、人気店なので簡単に予約が取れなかった。
取引先の伝手を頼ったアミールは、足元を見られてしまうが、ロブと店に行くことを伝えると取引先の態度は一変しフェンウェイの店に行けることになる。
その頃、ロブは昔住んでいた家を訪ね、そこにいた子供と昔あった柿の木の話をしていた。
ロブとアミールはフィンウェイの店を訪ね、フィンウェイに豚のことを聞く答えない。
フィンウェイはかつてロブの店で働いていたが、2ヶ月でクビになっていた。
フィンウェイは店を辞めるときパブを開きたいと言っており、ロブはこのレストランの人気は偽物で、それはフィンウェイが本気でレストランをやっていないからだと語る。
ロブが涙するフィンウェイに再び豚のことを尋ねると、犯人がアミールの父であることがわかる。
アミールの父はアミールと同じようにレストランに食品を卸す仕事をしていてが、お互いに干渉せずに仕事をしており、関係は切れていた。
ロブはアミールの父に会い豚を返すように言うが、金で手を打てと応じない。
実はロブは豚がいなくてもトリュフを探すことはできるが、豚への愛着で探していたことをアミールに明かし、リストを書いてあるものを全て揃えるように言う。
アミールは指示通りある納骨堂を訪ねるが、そこでロブの妻ローリーがすでに亡くなっていることを知る。そしてアミールはロブが納骨堂に預けていたワインを受け取る。
ロブは元は自分の店だった場所を訪ねるが、そこはかつてロブの店で働いていたパン職人によりパン屋に改装されていた。ロブはパン職人から1本のバケットを受け取る。
ロブとアミールが集めた材料でロブは料理を作り、アミールとアミールの父に料理を振る舞う。
その料理はアミールの両親がかつてロブのレストランで食べたメニューで、一口食べたアミールの父は涙して自室に戻ってしまう。
アミールの父を追いかけたロブは、ロブの豚がすでに死んでいることを知らされ落胆する。
アミールはロブをダイナーに連れて行くが、ロブは豚を探しに出なければ死んだことを知らずに済んだと語るが、アミールはでも豚は死んでいると変わらない現実を突きつける。
その帰り1人で帰ると言い出したロブをアミールは心配するが、2人は固い握手を交わしてそれぞれの帰路に就く。
元いた山に帰ったロブは川で顔を洗い、自宅の山小屋でローリーの歌の入ったカセットを聴きながらベッドに腰掛けるのだった。
レビュー・考察
静謐な雰囲気漂う独特な作風。
多くを語らないので、登場人物の心情は行間を読んで視聴者自身が察する必要がある。
死と向き合う3人
本作は大切な人の死とどう向き合うかがテーマになっている。
メインとなる登場人物はロブ、アミール、アミールの父の3人で、それぞれが大切な人の死に直面している。
ロブ(ロビン・フェルド)はかつては有名シェフで鳴らしていたが、妻ローリー(ローレライ・フェルド)の死以来山小屋で豚とトリュフを採ってひっそりと生きている。
アミールは母が自殺しており、父とは疎遠になっている。(正確にはアミールの母は自殺未遂で、意識不明のまま入院しているような描写がある。)
アミールの父は妻を亡くしており、親子共に食品卸売業を営んでいたが、経営は全く別で協力しておらず、そのことをロブは気にかけている。
またアミールの両親はかつてロブの店を訪れており、ロブの料理にとても感動し上機嫌で家に帰ってきたのをアミールは覚えていた。
アミールの父は豚の件を金で解決しようするが、実はトリュフを採るのに豚は必要なく、ロブは愛犬ならぬ愛豚として豚と暮らしているため応じない。
そんなアミールの父に、ロブはアミールの父が妻を亡くして以来そうなってしまったのかと語るシーンがあり、かつてはアミールの父も金で想いを清算しようとするような人物でなかったことが示唆されている。
レストランに来ていたアミールの父のことを覚えていたようである。
ロブはアミールの両親に出した料理を覚えており、アミールの父にその料理を振る舞うことで親子の絆を取り戻そうとすると同時に、アミールの父にかつての姿を取り戻して欲しかったのかもしれない。
料理を口にしたアミールの父は、ロブの問いかけに答え、豚が意図せず死亡したことを伝える。
その後アミールと関係を回復した明確な描写はなく、その後は視聴者に想像の余地を残すものとなっているが、きっと関係を回復したであろうことが期待できる終わり方になっている。
料理の力ってスゲー。
印象的なラスト
ロブは豚を奪われた時、頭から流した血を全く拭っていない。
そのため血がついたままの顔で映画は終始進むが、ラストで山小屋に帰った際に川の水で顔を洗い血を拭っている。
おそらく頭の傷は、豚を奪われたロブの心の傷そのもので、豚の死とローリーの死を受け入れたことでその心の傷が癒えたことを表しているのではないだろうか。
ラストで山小屋に帰ったロブは、映画冒頭では聞くことに耐えらえれなかったローリーに歌声のカセットテープを聞き続けており、ローリーの死を受け入れた様子が描かれている。
豚が死んだことを知らされたあと、ロブはダイナーでアミールに豚を探さなければ死んだことを知らずに済んだと話していたが、それでも豚は死んでいるとアミールに言われ、死を受け入れることができた。
このことはロブの妻の死でも同じであり、きっとロブはずっとローリーの死を受け入れられずに目を逸らし続けていたのではないだろうか。
ラストでローリーの死を受け入れたロブは、亡き妻の歌声に耳を澄ましているところで映画は終わるが、ロブが再び前を向いて生きていく、そんな希望を感じるラストになっている。
ラストの音楽が神々しい雰囲気とマッチしており、とても美しく心地よい。
アミールの父はなぜ豚を盗ませたのか?
ちなみにロブの豚を盗んだ犯人はアミールの父で、アミールはそのことを知らなかった。
アミールの父が豚を盗むよう指示した動機については、アミールの父は語らず、ロブもアミールも尋ねようとしない。
ロブとアミールにとっては動機はどうでも良く、豚が無事に帰ってくるかだけが問題なのかもしれない。
アミールの父の動機は劇中で明確に語られないので想像するしかないが、アミールに対する嫌がらせだったのではないだろうか。
アミールがロブと知り合いになったことを喜んで父に伝えたことが劇中で語られているが、伝説的なシェフであるロブと知り合ったアミールへの嫉妬か、別々の商売をしているアミールへの妨害あたりが動機として考えられそうである。