2018年のアメリカ映画
出演者はヴィゴ・モーテンセン、マハーシャラ・アリ
黒人差別と友情を描いたヒューマンドラマ映画
こんな人にオススメ!
・黒人差別のえげつなさを知りたい
・面白おかしいバディが見たい
・人種を超えた友情の美しさを知りたい
映画「グリーンブック」が5分でわかる!
あらすじ
・ニューヨーク州ブロンクス
高級ナイトクラブでガードマンとして働くトニーは、店が改装工事に入るため仕事がなくなる。
ドライバーの仕事を斡旋されたトニーは、ドクターシャーリー(ドク)という大富豪の黒人ピアニストの面接を受ける。
ドクは、2ヶ月間のアメリカ南部へのツアーに帯同するドライバーを求めていた。
トニーはトラブル解決の手腕を買われていたが、給料の増額を求め破談になる。
しかし翌朝トニーの家にシャーリーから電話がかかってきて、トニーは仕事を受けることになる。
トニーにはレコード会社より黒人が泊まれる宿をまとめた本グリーンブックが渡され、まずはピッツバーグに向かう。
立ち寄った店でトニーが翡翠石をくすねたことをドクは叱り、トニーはドクのために専用のピアノを手配するなど、紳士で洗練されたドクと粗雑なトニーはぶつかりながらもお互いの理解を深めていく。
・ケンタッキー州
車は南部のケンタッキー州に入り、トニーはドクにかつて妻がいたことを知る。
そんな時ドクがバーで袋叩きにされる事件が起こる。一報を聞いてバーにきたトニーは、得意のハッタリでその場を凌ぎドクを解放させる。
トニーはこの地域を知らないのかとドクを叱るが、ドクは北部でも同じことになっただろうと言う。
コンサートを終え、通りがかった農園では多くの黒人が働いており、全員がスーツ姿のドクを遠くから見つめ続けていた。
・ノースカロライナ州ローリー
コンサートで、ドクが会場のトイレを使おうとしたところ白人の老人に止められ、屋外のボロ屋で用を足せと言われる。
ドクは30分かけてホテルに戻って用を足し、コンサートを続ける。
トニーは我慢するよう言われ、ドクが希望してこの南部ツアーを行っていることを知る。
・ジョージア州メイコン
ドクは街で気に入ったスーツの試着を頼むが、店主はドクの試着を拒みドクは静かに微笑んで店を後にする。
コンサートが終わりトニーが休んでいると警察から電話がかかってくる。
トニーが警察署に行くとドクは全裸で拘束されており、トニーが警官を買収し解放させる。
・テネシー州メンフィス
ホテルで友人と偶然出会ったトニーは仕事を斡旋され、ドクはトニーに正式なマネージャーとして雇いたいと言うが、トニーはどちらの話も断る。
ドクはかつてはクラシックピアノだったが、クラッシクは黒人には無理というレコード会社の説得でポピュラーミュージックを弾くようになったという。
ドニーはクラシックはどこでも聴けるが、ポピュラーを聴けるのはドクだけだとドクを力づける。
・アーカンソー州リトルロック
夜間運転していたトニーは警察に呼び止められる。
警官は黒人の夜の外出は禁止されていると言い、トニーとドクは雨の中取り調べを受けさせられる。
イタリア生まれを馬鹿にされたトニーは怒って警官を殴り、トニーだけでなくドクも警察署に勾留される。
演奏会はフイになりトニーの給料も無くなった。
ドクはトニーに暴力は敗北で、品位こそが勝利をもたらすと伝える。
ドクは司法長官に連絡を取り、知事から連絡を受けた警察署長は慌てて二人を解放する。
その帰り、車内でトニーとドクは口論になるが、トニーはドクは黒人であることの蔑視に耐え続けていることを知り自身の短慮を恥じる。
・アラバマ州バーミングハム
1時間前にコンサート会場についたドクは物置に通される。
その間レストランに先行したトニーは、かつて黒人として初めてステージに上がり、暴力を受けた黒人歌手の話を聞き、ドクがこの旅にでたのは人を動かす勇気を示すためであることを知る。
そこにドクが遅れてくるが、彼はこの後演奏するVIPであるにもかかわらず黒人であることを理由にレストランに入れてない。
ドクは食事をできないなら演奏を断ると言い、レストランのオーナーはトニーにドクの説得を頼む。
トニーが彼を買収しようとしたオーナーに怒り、掴みかかったところをドクが止める。
トニーが言うならドクは演奏するというが、トニーは演奏しないと言いそのまま店を後にして黒人向けの店に向かう。
その店でドクは素性を明かさず演奏を披露、その店にいたすべての人を感動させる。
そして店のバンドと突然のセッションをすることになり観客は熱狂、ドクは演奏を心から楽しむのだった。
・ツアーの終わり
すべてのツアーが終わり、クリスマスのニューヨークに向かうトニーとドク。
しかしその後ろを警官が追ってくる。
しかしその警官は車のパンクを教えてくれただけで、ドクを見ても差別することはなかった。
吹雪が吹く中運転を続けるトニーだったが、疲労から激しい眠気に襲われる。
眠ってしまったトニーの代わりにドクは自分で運転し、トニーを彼を家族の元に送り届ける。
トニーの家ではクリスマスパーティの最中で、トニーは家族に会っていけと言うが、ドクは複雑な表情をしてその場を立ち去る。
自身の豪邸に戻ったドクだったが、賑やかなトニーの家とは対照的にその家には誰もいない。
その時、賑やかなトニーの家に突然ドクが訪ねてくる。
黒人のドクを見るとトニー家族は一瞬静まり返ったが、トニーの妻ドロレスはドクと抱擁を交わす。
トニーが旅先から出していた美しい文の手紙はドクが考えたものをであることを知っていたドロレスは、密かにドクに感謝を伝えるのだった。
その後ドクは演奏を続け、トニーはナイトクラブの支配人になった。
二人は固い友情で結ばれ、2013年この世を去った。
レビュー・考察
実は実話シリーズ。
時は1960年代のアメリカ。
黒人の公共施設の利用を禁止したジム・クロウ法が存在し、南北戦争時代に奴隷制維持を掲げた南部11州では差別が色濃く残る時代。
南部にツアーに出掛けたドクは、黒人というだけでどこに行っても暴力や理不尽に晒される。
バーで殴られる、服屋で試着を拒まれるなんてまだ序の口。
不当に逮捕されたり、取り調べもなく裸で拘束されたりと人権なんてあったもんじゃない。
でも白人たちはピアニストとして名声を持つ彼の演奏を聞きに集まってくる。
ホワイトハウスでも演奏したことがあるドクのコンサートは、白人たちのステータスの一つなのだ。
ドクは舞台上では称賛されるが、舞台を降りればトイレひとつ使わせてもらえない。
どれだけ優れた技術を持っていても黒人は黒人なのだ。
しかしトニーはそんな下衆な差別主義者とは全く一線を画していた。
知識と教養に溢れる穏やかなる紳士ドクとは対照的に、トニーはガサツで粗野だったが、同じ目線でドクを見ていた。
ドクが高名なピアニストだからとへつらうでもなく、黒人だからと差別することもなかった。
このことを象徴するのが、トニーがフライドチキンをドクに分けるシーン。
トニーはフライドチキンをドクに勧めるが、育ちの良いドクが素手では食べられないという。
トニーはフライドチキンを強引に押し付け、ドクは少し困った様子を見せながらもトニーと一緒にフライドチキンをかじる。
トニーに倣い骨は窓の外にポーイ。
フランクな態度でフラットに接してくれるトニーに、ドクは救われる思いだったのではないだろうか?
このフライドチキンのシーンではではドクの笑顔がはじけている。
こんな笑顔を見せるのは、ラストで黒人向けレストランでのコンサートシーンくらいである。
雇用関係にありながら、ドクとトニーは友人のようでもあり、時に教師と悪ガキのようでもあった。
例えばトニーが店で盗んだ翡翠石を返すよう叱るシーン。
トニーの落ちていた石を拾っただけだという言い訳なんてほとんど小学生である。
結局トニーは密かに翡翠石を持ち帰っており、それはドクにとっても思い出の品になるんだけどね。
さらにドクはトニーが書いていた家族への手紙の文章指導も行う。
トニーの手紙は誤字脱字だらけで、内容も意味不明だったので、ドクはトニーの代わりに文章を考えることにする。
この内容があまりにも華麗で、手紙をもらったトニーの妻は感激、周囲に見せびらかしたりするんだけど、ラストで代筆していたことはバレバレだったことが明らかになるのがかわいい。
えげつない差別と戦いながらツアーを続けるドクとトニー。
過酷な環境の中、友情を育む対照的なふたりの旅路を見届けよう!