【料理人の苦悩と狂気】映画「ザ・メニュー」が5分でわかる!【ネタバレあり】

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2022年のアメリカ映画
主演者はアニャ・テイラー=ジョイ、ニコラス・ホルト、レイフ・ファインズ
富裕層向けレストランで提供される衝撃のコースメニューを描いたスリラー

こんな人にオススメ!
・いつも誰かに食事を作ってもらっている方
・外食が多い方
・富裕層の方

映画「ザ・メニュー」が5分でわかる!

あらすじ

1250ドルの料理

タイラーは著名なシェフが営む豪華なレストランに向かうため、マーゴと待ち合わせ離島に向かう船に乗り込んだ。
離島への船には料理評論家リリエンや映画俳優、いかにも成金な3人組など数々の富豪が同乗していた。

離島の受付で実はタイラーは他の女性と来る予定で、その女性の代わりにマーゴを誘っていたことがわかる。
離島で一行は島の案内を受け、海の見える美しいレストランに案内される。
料理が出てくる直前になりシェフのスローヴィクが挨拶に出てくるが、料理は食べるのではなく、味わってほしいと述べる。

1品目「島」・2品目「パンのないパン皿」

1品目は「島」というタイトルの料理で、ホタテとシャーベット状の海水が美しく盛り付けられていた。
島の生態系をモデルにした料理で、スローヴィクは自然の営みに比べれば、この部屋で起こることなど瑣末なことだと語る。

2品目は「パンのないパン皿」という料理だったが、パンは庶民の食べ物なので、庶民でない今日のゲストには出せないということで、パンの塗り物だけが美しく皿に盛り付けられていた。
ゲストたちが困惑する中、タイラーはコースの包括的なテーマを楽しみにしていたが、マーゴはバカにしていると憤慨していた。

マーゴがこの料理を口にしなかったので、スローヴィクが気にして声をかけるが、マーゴはいつ何を食べるかは自分で決めると譲らなかった。

3品目「記憶」・4品目「混乱」

3品目は「記憶」というメニューで、スローヴィクは客席にいた自分の母親を紹介する。
スローヴィクが幼い頃、父が母の首を絞めるのをやめさせるためハサミで父の大腿部を刺した話をする。

出てきた料理は鳥のもも肉にハサミが刺されたもので、セットのトルティーヤにはそれぞれの秘密が描かれていた。
タイラーのトルティーヤには撮影禁止の今日の料理をタイラーが撮影しているシーンが描かれており、不快に感じたマーゴは料理を突き返して食べるのを拒否する。
マーゴはタバコを吸いに女子トイレに行くが、そこにスローヴィクが現れマーゴが食べない理由とマーゴの素性を問うが、マーゴは作り話で答える。

4品目は副料理長ジェレミーの料理で、金持ちに完璧な料理を作り続けことで生じるシェフの肉体や精神にかかる混乱について語り、スローヴィクの立場に憧れるかという質問にジェレミーはノーと答え拳銃で自殺してしまう。
ざわめくゲストたちを前にスローヴィクは平然とメニューの一部だと答え、「混乱」という名の料理が出てくる。

ゲストの一人であるリーブラントは帰ろうとするが、スタッフに捕まり客席で左手の薬指を切り落とされてしまう。
マーゴはスローヴィクにキッチンに呼び出され、今宵全員が死ぬことを知らされるが、この場にふさわしくないマーゴには与える側のものとして死ぬか、奪う側の者として死ぬか選ぶように迫られる。

口直し「ベルガモットとレッドクローバーのお茶」

口直しのお茶がサーブされ、スローヴィクは料理評論家のリリエンに、リリエンのおかげで成功した一方で、何人もの料理人が潰されたと話す。
指を切られたリーブラントには、過去11回もこの店に来ているのにメニューをひとつも覚えていないことに怒りをぶつける。
スローヴィクのパトロンであるヴェリクの権威を傘に着るチンピラ3人組には、天使の翼をつけさせられたヴェリクが、ゆっくりと海に沈められるのを見せつける。

スローヴィクの部屋に呼ばれたマーゴは、与える側奪う側どちら側として死ぬかを再び訪ねられるが、マーゴはそのどちらも拒否してクソ野郎と罵る。
実はマーゴは娼婦でリーブラントは、マーゴの客だった。
そのことを見抜いたスローヴィクは、人に奉仕する仕事について語り、スローヴィクも昔はシェフとして人に奉仕するのが楽しかったと語る。

5品目「男の過ち」

5品目は女性の副料理長キャサリンのメニューで「男の過ち」という料理だった。
キャサリンはかつてスローヴィクに迫られ拒否した話をし、スローヴィクの股間をハサミで刺す。

食後スローヴィクは男のゲストだけに45秒の逃走の時間を与え、女性のゲストには料理を振る舞った。
男の客たちは連れ添った女性たちを置いて一斉に逃げ出し、45秒後にレストランのスタッフが一斉に追いかけ始めるが、男たちは次々に捕まり、レストランに戻された。

スローヴィクはタイラーになぜここにいると話し、タイラーは本来連れてくるはずだった恋人に振られており、一人では予約できなかったのでマーゴを雇ったことがわかる。
タイラーは事前に全員が死ぬことを知っており、これに激昂したマーゴはタイラーを豚野郎と罵って殴る。

6品目「タイラーの駄作」

スローヴィクはタイラーの味覚を褒め、グルメマニアのタイラーは料理人であるべきだと語り、厨房着を着せ料理をさせる。
シェフたちとゲストが見守る中タイラーが作った料理をスローヴィクはまずいと酷評し、「タイラーの駄作」と名付けた。
スローヴィクはタイラーに何かをつぶやくと、タイラーは力なくどこかにフラフラと歩いて行き、首を吊ってしまう。

スローヴィクはマーゴは与える側の人間であると語り、マーゴにデザートに使う酒の入った樽を使用人のエルサに代わり取りに行くように命じる。
マーゴは倉庫で見つけたナイフを片手にスローヴィクのテストキッチンに忍び込むが、そこにはエルサが一人で佇んでいた。
エルサは自身の役割をマーゴに奪われると感じナイフで襲いかかってきたため、マーゴは抵抗し、ついにはエルサを刺し殺してしまう。

マーゴがテストキッチンの奥の扉を開けるとそこはスローヴィクの私室だった。
部屋の中にはスローヴィクがリリエンにインタビューを受けた時の記事などが飾ってあり、その中には若き日のスローヴィクが楽しそうにハンバーガーを料理している写真もあった。

「チーズバーガー」

マーゴは部屋にあった無線で密かに助けを求め、スローヴィクに頼まれた樽を持ってレストランに戻る。
程なくして警官が助けに来るが、それを見たスローヴィクは場を取り繕い、ゲストたちに何も言わない求めないように求める。
ゲストの中に映画俳優がいるのを見つけた警官はサインをねだり、映画俳優はサインを渡すふりをして警官に助けを求める。
警官がスローヴィクに銃を突きつけるとゲストたちは口々にスローヴィクに殺されると訴えるが、実は警官もスローヴィクとグルで、結局何もせずにどこかに行ってしまった。
スローヴィクは協力を乱したマーゴは奪う側の人間だと非難し、最後の料理の準備に入る。

最後の料理を前にマーゴは料理が気に入らないと言い出す。
今日の料理はテーマが難しい上愛情がなく食べられない、料理人の仕事は料理で人を楽しませることだが、スローヴィクは失敗しマーゴを退屈させたという。
まだ何も食べていないマーゴにスローヴィクは注文を聞き、マーゴは本物のチーズバーガーを頼む。
チーズバーガーの料金は9ドル95セント、マーゴの両親でも注文できる料金だった。

スローヴィクは頬を緩ませながらチーズバーガーを作り、口にしたマーゴはそれを本物のチーズバーガーと評すると、食べきれないのでテイクアウトをしたいと頼む。
マーゴの最後の一品はチーズバーガーになった。

スローヴィクはチーズバーガーを包んでお土産と共にマーゴに渡し、それを受け取ったマーゴは他の客たちが見つめる中一人レストランを退出する。

デザート「スモア」

スローヴィクは自身の人生と作品を台無しにしたゲストたちに、最高傑作の一部になるように伝えるとゲストたちにマシュマロのエプロンとチョコレートの帽子を着用させ、床にシリアルを撒く。
スローヴィクは清めの炎で全員溶け合って一つになると語ると、シェフたちはその場に火を放ちゲスト共々火に包まれた。ゲストたちの最後の1品はスモアだった。

マーゴはレストランから上がる火の手を船の上から眺めチーズバーガーを頬張ると、その口元をお土産に入っていた本日のメニュー表で拭い捨てるのだった。

レビュー・考察

仕事のやるせなさに狂ってしまったシェフの話。
スローヴィクの心情はあまり語られないので、断片的に明らかにされる情報を頼りに彼がなぜ全員を殺さなければならなかったのか、またなぜマーゴは逃したのかを考察していきたいと思う。

まずは登場人物の整理

名前も語られない登場人物がいるので、その点はご容赦いただきたい。
また、3品目「記憶」に出てきたトルティーヤに書かれた各自の秘密についても触れていきたい。

①ゲスト
・タイラーとマーゴ
タイラーはパコジェットという業務用のチーズ粉砕器を個人で所有するほどのグルメマニア。
マーゴの本名はエリン。職業は娼婦でタイラーに雇われて参加した。
トルティーヤの絵:禁止された料理の写真を撮影するタイラー

・リリアンと出版社の男
スローヴィクが成功するきっかけを作った女流評論家、しかしその一方で数々の料理人を酷評し追い込んでいた。
トルティーヤの絵:かつて酷評して閉店に追い込んだ店

・リーブラントと妻
リーブラントは富豪で、スローヴィクのレストランにも過去11回訪れていた。
しかしその料理をひとつも覚えておらず、妻が覚えてた料理もタラではなく貴重なオヒョウの料理だった。
トルティーヤの絵:若い女性と密会するリーブラント、この若い女性はおそらくマーゴ

・チンピラ3人組
スローヴィクのスポンサーであるヴェリクという人物の部下で、その権威を傘に着て横暴な態度をとる。
トルティーヤの絵:普段生業としている偽造請求書作成のノウハウ

・映画俳優と連れの女性
スローヴィクが何ヶ月ぶりかの休日で観にいった映画の俳優。俳優自身も認める駄作だった。
トルティーヤの絵:かつて出演した駄作映画

②レストランのスタッフ
・スローヴィク

調理長。リリアンに見出されて成功し、ヴェリクのレストランでプライベートを捨ててまで富豪たちに料理を振る舞い続けてきた。

・ジェレミー
副料理長。スローヴィクに憧れ弟子入りしたが、心身をすり減らす毎日にスローヴィクの日常には憧れないと感じ自殺した。

・キャサリン
副料理長。女性料理人で、スローヴィクに迫られていたが拒否していた。全員死ぬ企画を考えた張本人で、リリアンとのやり取りから、かつてリリアンに追い込まれた料理人の1人であると思われる。

・エルサ
使用人のアジア人女性。柔和な態度の裏に闇を抱えており、マーゴに役割を奪われると感じ襲いかかる。

・シェフたち
10人程度居るシェフたち、スローヴィクの指示には一糸乱れぬイエッサーで返答する。彼と共の死ぬことを受け入れている。

③スペシャルゲスト
・ヴェリク
レストランのオーナーで、スローヴィクのスポンサー。チンピラ3人組は彼の部下。
おそらくスローヴィクに富豪向けの料理を作らせ続けた張本人。スローヴィクのメニューに口出ししたことで海に沈められた。

スローヴィクの動機

さて、スローヴィクが凶行に至った理由だが、一言で言うと仕事のストレスである。

スローヴィクは富豪向けメニューを作るため心身をすり減らし、スローヴィクを尊敬するジェミニにすら、その日常には憧れないと言われたほどである。
スローヴィクにも妻子がいたことが私室の写真で示唆されているが、数ヶ月に一度の休日に1人で映画を見に行っているあたり、家族とは別れているようである。

プライベートを犠牲にしてまで用意した料理だが、リーブランドは全くメニューを覚えておらず、その妻は貴重なオヒョウをタラと勘違いしていた。
さらに評論家のリリアンは無責任にシェフを酷評し、レストランを閉店に追い込んだりしていた。

このようなシェフの努力を踏み躙られる思いが続くうちに、味も分からないのに富豪向けメニューを求める富裕層への怒りを募らせていったものと思われる。
映画俳優の連れの女性は出身大学と学生ローンを借りていないことを理由に死すべしと判断されており、その怒りは富裕層そのものに向かっているようである。

ちなみにこの映画俳優自体は、数ヶ月に一度の休日で見にいった彼の映画がつまらなかったという理由で死の運命を押し付けられた。
映画俳優に仕事への熱意がないことを看破されており、スローヴィクの芸術家としての怒りに触れたようであるが、ほとんど八つ当たりのようにも思える。

このような富裕層向けの仕事をさせたのは、スローヴィクのスポンサーであるヴェリクだったと思われる。
なぜなら1食1250ドル(約20万円)のこのレストランはヴェリクのもので、スローヴィクは雇われシェフに過ぎないからだ。
ヴェリクはスローヴィクが考え抜いたメニューに口出しをしたことでスローヴィクの怒りを買い、その横暴な部下3人組とセットでギルティと判断された。
張本人のヴェリクは無駄に天使のコスプレをさせられ海に沈められ、その指はゲストへのお土産にされた。強い憎しみを感じる。

なぜマーゴは見逃してもらえたのか?

マーゴは元々参加すべき人物ではなかった。
タイラーは別の女性とレストランに行く予定だったが直前で振られており、1人では予約できなかったのでマーゴを雇っていたのだ。
ゲストたちは情報を調べられ、その情報はトルティーヤのイラストに使用されたが、マーゴは完全に部外者だったので何者かわからなかった。
そのためスローヴィクもその扱いに悩み、マーゴが与える側(奉仕者たち)か奪う側(富裕層たち)か判断に困り、マーゴが何者か探っていた。

スローヴィクはマーゴが娼婦と知り奉仕者として与える側に入れ、エルサの代わりに使用人の仕事をさせようとしていた。
しかしマーゴが密かに無線で外部に助けを呼んだことから、シェフたちと価値観を共有できないと判断され奪う側にされる。

しかしここでマーゴはスローヴィクにチーズバーガーを注文する。
チーズバーガーはスローヴィクが若かりし頃、まだ彼がゲストに奉仕するのが楽しかった頃に作っていた料理だった。
マーゴはそのことを私室に飾られた写真で知り、チーズバーガーを頼んだのだった。

マーゴのためにチーズバーガーを作るスローヴィクはかすかに笑っており、かつての気持ちを思い出させてくれたマーゴに感謝し、逃したものと思われる。

ちなみにこのチーズバーガーの料金は9ドル95セントである。
マーゴの両親にも支払える金額だと言っているあたり、マーゴが富裕層ではないことも逃すことにした要因になっているのだろう。
ちなみに日本の感覚だと10ドル(1500円)近い金額のチーズバーガーを食べられるのはすでに富裕層である。

マーゴが店を去る時、本当に去っていいのかゲストの方を振り返るが、その時リーブラントの妻が小さく行けとジェスチャーするのが印象的。
自身もシェフたちを傷つけていたのに気がつき、マーゴはタイラーに巻き込まれただけなのを知っての行動なのだろう、

なぜタイラーはレストランに来たのか?

タイラーはスローヴェクと8ヶ月も連絡を取っており、この日のゲストが全員死ぬことを知っていた。
なのになぜ来たのか?とスローヴェクからも問われている。

明確な答えはタイラーからも返ってこなかったので推測するしかないが、グルメマニアであるタイラーは今日のメニューがこれまでで最高に壮大なものになると聞いて、なんとしても食べたかったのではないだろうか。
タイラーは所々でスローヴィクに嫌われないか気にしていたが、もしかしたら自分だけは料理を食べた上で生かしてもらえると思っていたのかもしれない。

もちろんスローヴィクにそんなつもりはなく、料理を散々に罵倒された挙句、何かを囁かれ自ら厨房着を脱ぎ自殺してしまう。
おそらくタイラーのグルメマニアとしての尊厳を激しく傷つけるものであったのは想像に難くない。

シェフたちの思い

全員が死ぬ企画を考えたのは副料理長のキャサリンだった。
自殺した副料理長ジェレミーだけでなく、他のシェフたちもスローヴィクともに死ぬ運命に抗う様子はなく、その運命を受け入れている。
副料理長のキャサリンとリリアンの会話からは、キャサリンはかつてリリアンに追い込まれた料理人である可能性が窺える描写となっているが、他のシェフたちも同じような理由でスローヴィクに雇われたのではないだろうか。
そうだとすれば、ともに死ぬことも厭わないシェフたちの強い信頼感も頷ける。

丁寧に伏線が用意された良作

スローヴィクの動機や心情があまり語られないので、自らで想像するしかない部分を残した作品だが、そのヒントはあちこちに散りばめられている。
その辺の謎解きを楽しめるかで評価が変わりそうな作風だが、先の読めない展開は一見の価値がある。

人気女優アニャ・テイラー・ジョイの演技も素晴らしく、マーゴというキャラクターの権威に靡かない、芯の強い気性がよく表現されている。
スローヴィクも休日に見に行った映画が彼女の作品だったら、もっと違った人生があったのかもしれない。

どうでもいいがスローヴィクの料理への想いが強過ぎて、私語禁止みたいなめんどくさいこだわりのあるラーメン屋みたいになっている。
私はもっと気楽に料理を楽しみたいな〜

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